[連載]常笑upcoming fishing!☆第2回 三陸の夏!活きイワシの夏!!
連載:針生秀一さん 第2回 三陸の夏!活きイワシの夏!!
※この記事は2013年6月にプレミアムメルマガで配信したものです。
梅雨ですが、その合間の晴れが気持ちよく、釣り物も増えてきて釣り心が騒ぐ季節です。その中でも、沖釣りの人気の釣り物は活きエサの泳がせ釣り。定置網にイワシが入り、エサが充分に確保できるようになると、ヒラメ、イワシ五目で各港から出船が始まります。
いちはやく開始した塩釜、亘理荒浜ではヒラメの好釣果が出て、期待通りの好スタートです。そして、これからの注目地域といえば、ライトな道具立てで楽しめる岩手、宮城の三陸沿岸の各湾ですね。
カツオ船の関係で古くから楽しまれてきた三陸の船ヒラメ
三陸沿岸には、古くからカツオ船に供給するイワシ定置網が設置されていた港があり、エサの活イワシが入手できていたので、仙台湾のヒラメ釣り開拓以前は、イワシの泳がせでヒラメ釣りといえば、三陸の各港出船でした。
リアス式の入り組んだ海岸線に好ポイントが続き、山と海が重なる優美な風景を眺めて釣るのは格別ですね。各地からこちらに来て、三陸の釣りに魅せられたという釣り人の声を多く聞いています。
宮城では女川周辺、南三陸の志津川、歌津、本吉気仙沼。岩手では大船渡越喜来湾、釜石周辺、宮古は重茂周辺の各港など、各地域で今季もヒラメ、イワシ五目での出船が始まるでしょう。
特徴としては、使用オモリ30号とする船が多く、カレイの掛かり釣りなどのタックルも流用できて、ライトタックルでの釣り味が良いのがひとつ。また、エサのイワシが他地域と比較して豊富で、胴突き2本バリの仕掛けも使える、というメリットがあります。
ヒラメ仕掛けには定番の胴突き1本バリという形があります。このシンプルな形式のなかにも、ハリス、捨て糸の長さ設定などを、釣り場の状況、そして自分のタックル、釣り方にあわせて変えていくという奥深さを見出せ、これで当たったときの喜びがあります。
かつては中通しナツメオモリを使った1本バリ仕掛けが三陸ヒラメ釣りの定番でしたが、他地域と同様な胴突き1本バリを、エサのカタクチイワシに合わせて孫バリを打たずに、細仕掛けにしたものが主流になりました。そして、さらに効力を上げることを目指して生み出されたのが、三陸地域に独特な2本バリ仕掛けなのです。
これのメリットと狙いは、ヒラメの一荷釣りというわけではなく(好調時は一荷もありますが)、マイワシに比べて小型のカタクチイワシを、上下2匹付けることで、アピールを上げることの意味が大きいのです。
高低差のある岩礁帯を釣るときでもタナを取りやすく、ソイなど良型根魚のヒットも期待できます。大ヒラメには高ダナが有効ですが、底際のタナ取り中心で上バリのイワシがアピールします。寄せと食わせと、肝心のタナ取りが確実にできるというわけです。
この仕掛けには、上下のハリス長、ハリ間隔の設定の違いで各釣具店、釣り船のオリジナルバージョンがあります。その地域に合わせた釣り方から生み出されたものなので、初めて訪れるときには、一度使ってみるのが良いでしょう。それを元に、自分の釣り方に合わせて、パーツなどを変えていくというのも楽しみです。
使うタックルは20号負荷程度の6:4~7:3調子で2.4m前後の竿に、PE2~3号を150mくらい巻ける小型両軸リールの組み合わせがベストマッチ。三陸ヒラメ専用のロッドも各メーカーから発売されています。
2m前後のライトゲームロッド、カレイの掛かり釣りのロッドなどを使うときには、下バリまでのハリス長に対して竿が短く、取り込みに支障が出ます(仕掛け全長より竿が短く、トップガイドにサルカンが当たって巻き込めないため)。この対策として、道糸にフロロカーボン5号を先糸として3mほど結び、上バリの親子、トリプルサルカンに直接スナップサルカンで接続すると良いでしょう。
エサ付けは重要なところ。イワシの刺し方は、下アゴから上アゴにハリを抜いて口を閉じるように掛けています。カタクチイワシはマイワシと違って口が大きく開くので、口を閉じないと降下中に口が開いてしまいます。これで回転して幹糸への絡み、ハリスのヨレが多くなり、イワシのダメージも大きくなります。
マイワシは上アゴへ口が開くように刺しますが、カタクチとマイワシの違いを認識して刺し方を変えるのが重要なところです。上バリからイワシを掛けて海面に降ろし、下バリにイワシを刺して海中に泳がせたところでオモリを入れます。このとき上下のハリスが交わらないように、適度なテンションを保って投入しましょう。
着底瞬間の食い込みが多いので、竿先を水平より下げて糸フケを巻き取り、ゆっくり聞き上げるように水平上に戻します。ここでアタリを感じたら、その位置で竿を保ち、うねりの上下をかわします。竿先を支点に保ち、次の本アタリに対応できるように構えます。
アワセに入る本アタリがなかなか出ないときは、じっと待つよりも、そっと聞き上げるようにしてテンションを掛けます。これで食い込みを促すのが狙いですが、すでに深く食い込んでいるのかを確かめる動作も兼ねます。
ググッと大きなアタリや、張り付くような重量感を感じたら、さらに上に追いアワせるように立てていきます。ここで一旦止めて待ったり、送り込みでテンションを緩める方法を取るよりも、思い切って掛けていくほうが気分がよく、実際に掛かる打率はよいです。
これで掛からないのは小型のソゲが多いですね。迷ってクラッチフリーにしてオモリを底に落とす極端な送り込みや、強すぎるアワセの操作はあまりオススメしません。
アワセを外してもエサがもうひとつ残っているので、もう一度落とし直して食い直しを狙えます。これで再度食いついてくる場合が多く、これは2本バリ仕掛けの大きなメリットですね。2本バリなので底際でオモリ底スレスレのタナ取りで充分です。船の動きに合わせて底を取り直します。これが誘いに繋がります。
私は大きく活きのよいイワシを上バリに掛けるようにしています。これは上のイワシが元気に泳ぐことで、下バリのイワシが刺激を加えられて泳ぎ、アピールを上げる狙いです。ヒラメは上を見上げているので、活性の高いヒラメは上の大きなエサに注目します。最初に行動を起こすのは大型です。
濁りや水温の変化などで活性が下がり、アタリが少ないときにも、上に大きめを掛けることでアピールが上がります。ハリスの長さを上下で変えるのも良い作戦です。短めのハリスにするとイワシの泳ぎが激しくなり、特にイワシが小さいときは短めのハリスで泳がせるのが有効でしょう。
潮流や風で船の流れが大きいとき、大きなイワシ、アジ、小サバなどには、テンションがかかって長めのハリス設定を生かせます。そのときの状況、イワシのサイズなどを考えに入れて上下のハリス設定を変えてみましょう。これが面白いところでもあります。
泳がせて食い込ませる面白さとスリリングなヤリトリ。これを味わえるシーズンに入りました。今季も期待充分です!
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船釣りを中心に、防波堤や河川の小物釣りなど、なんでもこなすオールラウンダー釣り師。全国各地の釣りと釣り具の知識が豊富で、釣りの生き字引的存在。泉区のロックバーラグ(Rag)オーナー。シマノフィールドモニター
※取材テキスト・写真提供/針生秀一