[連載]常笑upcoming fishing!☆第6回 深海マダラの攻略
連載:針生秀一さん 第6回 深海マダラの攻略
※この記事は2013年10月にプレミアムメルマガで配信したものです。
これから冬に向けて楽しみな釣り物のひとつが深海釣り。なかでもマダラは外せないターゲットです。特に初冬は白子が期待できる時期で、食の楽しみと豪快な釣りの両方を味わえます。
タラ釣りは東北の深海釣りで一番人気であり、深海入門にも最適です。タックルの出費は決して安いものではないですが、船宿によってはレンタルも充実しているので、まずはレンタルでトライしてみるのも良いです。なにせこの釣り、やってみると好き嫌いがはっきり分かれるものなのです。
マダラのエサ釣り基本の道具立て
タックルは、PE8~12号を800m以上巻けるサイズの大型電動リールに300号以上を背負えるロッド。そして重要なのが頑強なロッドキーパーです。ハリ数が多く、全長が長い仕掛けを使うので、1m程度の長さのマグネット板も必携アイテムです。
タラ釣りのポイントは水深200m前後が多く、深海釣りと呼ばれるジャンルの中では浅場です。オモリは300~350号主体に使われています。このくらいなら中型の電動でも使えそうと思ってしまいますね、最新型はパワーも充分ですから。しかしライト化が進む他の釣りと違って、深海釣りに関してはライトタックルが好ましくない傾向もあるのです。
それは道糸の細糸化による高切れが、ポイントに及ぼす影響が第一にあります。私の経験でも、宮城の代表的なタラポイントの金華山沖で釣っていて、底から20m以上巻き上げたところで根掛かり。よっぽど高い沈船のマストかなにかに掛かったのかと思って回収すると、高切れした道糸と仕掛け、メタルジグが絡み合って上がってきたことがありました。これは海底で高切れした道糸が多数で、まるで蜘蛛の糸のように漂っているというような様相が想像されます。
こんなことを減らすためにも、仕掛けのスペックに見合った道糸の号数、最低8号以上を巻いておきましょう。シマノ9000、ダイワ1000、ミヤマエ3~9の大型でパワフルなリールがオススメです。深海釣りでは根掛かりがつきもの。そのために力強く頑丈なものを使って、掛かった魚は必ず上げる。底にものを残さず取り込むという心構えが肝心なのです。
竿は2~2.7mくらいの深海竿。タラ釣りではオモリ300~350号を標準に使うポイントが多いので、オモリ負荷200~300号表示を目安に選びましょう。頑強な胴ながらウネリでのハネを吸収して抑えるというのが理想です。粘りのあるグラス素材の竿にマッチする調子があります。あとは竿尻が短いというのも重要なところ。置き竿の釣りなので、竿尻が長いと作業の邪魔になるのです。バット部分が丈夫で頑強なものを選びましょう。
そして重要なアイテムがロッドキーパーです。大きな負荷がかかるので、プラスチック製よりも頑強な金属製がベスト。第一精工の最強ラーク、ミヤマエのロボット竿受などがオススメです。
深海マダラ釣りの仕掛け
仕掛けはムツバリ20~24号、ハリス10号、幹糸16~24号という仕様。上部にはボールベアリングサルカンやヨリトリリングを使い、ハリスの結束はクレン親子、松葉サルカン、トリプルサルカンなどで、丈夫で大きめのサイズを選びます。一般的なクレン親子なら1/0×1、トリプルサルカンなら3号くらいを使いましょう。ベテランに多く使用されているのが松葉親子サルカンで、回転がよく、幹糸、ハリスのヨレを減らせます。
幹糸は太くても食いに差は出ないので、多点掛け、根掛かりで切れない太さにします。私が使っているのは、サンラインの海平18号500m巻きで、手頃な価格でプロユースの強さ。そして適度な伸びでクッション的な役割もしてくれます。ハリスはフロロカーボン8~10号を40~50cmなので、間隔を1mくらいに設定して結びます。
捨て糸は10号を1mくらい。7号以下の細糸では、まさに捨てオモリになって、簡単に切れてオモリを失います。10号なら切れずに抜けてきて損失が少ないです。道糸、幹糸を太くしてパワーのあるリールを勧めるのは、こんなことも想定しているからなのです。
ハリはムツネムリが標準です。タラはエサを丸呑みしますが、ハリ先のネムリによって、口の中より唇に掛かる確率が上がるのです。これで歯に擦れてのハリスのダメージを減らせます。
ハリの色は金、銀にメヌケに効果的といわれる赤など。ハリのカラーでそんな差は出ない、これはおまじないのようなものという感覚ですが、こんな微妙な違いで食いが変わることもあるのです。特に黒潮が強めで青い水色の北茨城、いわき沖や、初秋の金華山沖に日本海側などでは、反射の少ない黒や素焼きの銀バリの使用で、明らかに差がみられることがあるのです。黒のムツバリはなかなか見当たりませんね。そこで北海道で使われているサーモンフックや管付ソイバリも良いのです。これは釣友の深海釣りのベテラン、佐藤伸さんに教わりました。実は春先の久慈沖のソイ釣りでも、この傾向が強く現れるのです。
【小技】サンマエサの切り方
一番のエサはサンマ切り身です。皮が柔らかいので、海底まで取れずに、そして回転しないように刺すことが重要点、そのサンマの切り方を説明します。
冷凍サンマを半解凍くらいのうちに、3枚におろします。身は薄く均一に5mm程度に削ぎます。胸ビレの付け根と尾ビレの前の硬いところを、必ず残すようにおろしましょう。半身を2分割、または半身全部をハリに刺します。
2分割のときは、まず胸ビレ側は、付け根の硬いところを中心にハリを通します。尾ビレ側は、付け根の硬いところに刺してハリのチモトまで通し上げ、そこで切り身を3回まわします。そして身の中心の皮側からハリを刺して完了です。これで外れることなく深海にエサを送れます。
イカタンも定番エサで、丈夫でエサ付けがイージーというところも良い点であります。幅2cm、長さ15cmくらいに切りましょう。秋の大船渡綾里沖では、マダラが根の上に群れるスルメイカを捕食しているので、マッチザベイトで良く当たります。特エサにヒイカや、出始めの小型ヤリイカの一匹掛けも効果的です。
釣り座には、ロッドキーパーのトモ側にマグネット板をセットするのが基本です。まず道糸をキーパーの糸受けに下側から挟み、上バリから順番にマグネット板に置いていきます。トラブルのないように、足元には何も置かないようにしましょう。投入はトモ側から船長の合図に従っての投入が通例です。これでトラブると一回休みになるので、確実に入れられることが肝心です。
マダラの釣り方~釣り座選びも重要~
経験が少なく手返しに不安があるという方は、投入が後になるミヨシ側が良いです。船長に申告して釣り座を前にしてもらいましょう。深海のベテランほどトモ側を好みますから、ミヨシ側は譲ってくれるはずです。
投入の合図でオモリを前方に投げ入れます。マグネット板からババっとエサが入っていくのが気持ちよい。全部入ったところで、リールのクラッチ、パワーレバーをフリーにしましょう。
着底を確認したら、糸フケを巻き取ります。オモリが刺さって抜けてくるような平坦な場所なら、うねりの上下でオモリが底を叩くくらいで。ゴンゴンと感じるキツイ根なら、手早く1mくらい底を切って、流していって何かに当たるたびに、オモリを底からを上げるようにタナを取ります。これが基本です。
マダラはジギングのターゲットとしても人気なように、動くエサに反応します。基本の底の取り直しが誘いに繋がるわけですが、意図的にシャクリを入れて誘うことも有効です。キーパーに置いたままで竿先を大きく振り上げて落とし込み、少し待って食いつく間を取ります。ハンドル一回転巻いて繰り返し振り上げ、反応を見て5mくらい探り、そして底を取り直すのが基本的な誘いのパターン。深海ワンピッチジャーク、イカのシャクリ的な感覚でしょうか。
マダラのアタリは、吸い込むように捕食してくるので、フワっと小さく止まるような動きから、ハリ掛かりするとゴゴンと大きく竿先を動かしてきます。メヌケ釣りなら糸を送るところですが、マダラでは、掛かったマダラにエサを躍らせるイメージでテンションを保ちます。メバル釣りの追い食いと同じような感覚です。しかし、待ちすぎや糸の送りすぎは、根掛かり、オマツリの原因になります。頃合いを見て巻き上げましょう。
巻き上げ速度は中速くらいで、うねりのピークで持ち上がったときにドラグが滑るくらいにコントロールしながら巻き上げます。こうした操作が必須なので、深海釣りにはレバードラグが良いのです。北茨城、いわき沖、そして日本海側では、サメにやられることがあるので、残り50mあたりからドラグを締めて全速巻きをする場合もあります。指示を聞いておきましょう。
取り込みはギャフ掛けで、船長、中乗りさんが掛けてくれます。仕掛けが太いので、絡みのトラブルは少な目ですが、多点掛けの際は、仕掛けと魚が重ならないように注意しましょう。
入れ食いで手がまわらないときは、自前で取り込みましょう。まずは仕掛けを引いてマダラの頭を海面から出します。口が開いていたら口内へ、閉じていたら腹側からエラブタへギャフを刺し入れます。刺さったら真上に上げるようにして船内に入れましょう。落ち着いてやれば難しくなく、豪快な漁師気分が味わえますよ。
さて白子の入る楽しみな時期です。釣り河北の釣果欄にもマダラの釣果が出てきていますね。旬のマダラを狙いに出かけましょう!
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※取材テキスト・写真提供/針生秀一