3.11の大津波から20日間経った3月31日、甚大な被害のあった宮城県亘理町の荒浜漁港周辺を訪問した。国道6号線から折れ、荒浜漁港めがけて突き進むと、漁港に近付くにつれ、潮とヘドロの混ざったような臭いが漂う。道路の脇には排除された瓦礫や押しつぶされた車、船などの残骸が無残な姿で残っている。改めて今回の大津波の恐ろしさを実感させられた。
漁協前から見た荒浜港。港湾内には転覆した船が数隻あるほか、漁港のいたるところでヒビ割れや、崩落が見受けられた
「今が踏ん張りどき。やる気さえあれば何とかなる。今こそ、海を愛する皆が一丸にならなければ」と力を込めて復興への熱い思いを語ったのは、荒浜釣船組合事務局の菊地伸悦さん。菊地さんは県漁協亘理支所の運営委員長も務め、周囲からは「荒浜の組合長」と呼ばれる荒浜地区のリーダー的存在だ。
津波で1階が押し流され、4本の支柱が剥き出しになった宮城県漁協亘理支所
荒浜地区では84隻あった漁船、釣船はすべて流され、魚市場をはじめ周囲の倉庫、関連施設は壊滅。組合員197名のうち10名が犠牲となった。家族や親戚の行方不明者は数知れない。組合長自らも避難所に寝泊まりし、漁業、釣船関係者をはじめ町民のフォローにあたる。市場前には仮事務所を設置し、組合員の相談にも応じている。
上)菊地さん所有の釣船「きくしん丸」。津波により停泊場所から数メートル押し流されたものの、数隻まとめて繋いでいたのが幸いして軽傷で済んだ。下)築港通りに面していた釣用品きくしん店舗。駐車場があった店舗前の岸壁は、今回の津波で瓦礫の山と化した
現在、全力で復旧作業中の荒浜地区。「国民の皆様、県、町、ボランティアの方々の温かいご協力には本当に感謝しています。荒浜の漁業、遊漁船の再開のために、まずは捜索・復旧活動が最優先。そして、ひと段落したその時に、皆で話し合いたい。海を愛する者同士、足並を揃え、心を一つにし、漁場を共有していきたい」と復興への決意を新たにした。
周辺の民家は無残にも基礎だけが残り荒野となっていた。右上にポツンと見えるのが「わたり温泉 鳥の海」。釣りの帰りに立ち寄ったことのある方も多いのでは
荒浜沖は、春はメバルやアイナメ、夏から秋はヒラメにスズキ、そして周年良型のカレイが狙える県内屈指の好釣り場。昨年には釣り河北主催のヒラメ釣り大会も開催した。また、サケのはらこ飯、ほっき飯をはじめ、シタビラメ汁などの名物も多い。一日も早い再興を願うとともに、被災された方々には心よりお悔やみとご冥福をお祈り申し上げます。
避難所で釣船・漁業組合のフォローに当たる宮城県漁協亘理支所運営委員長・荒浜釣船組合事務局の菊地伸悦さん。「釣り人、県民の皆様にご理解頂く時が必ず来る。決して諦めないよ。だってここに住んでいるのは、海が好きな人たちばかりだからね」と、早期復興に向けて熱い思いを語った