釣行記

東北の有名アングラーらによる釣行リポート!最新の釣況情報、テクニックをカバー!!

北三陸の深海で夢のコウジンメヌケ獲り!

針生 秀一 2022年2月18日 更新

いま、何かと話題となっている宮古以北の三陸北部地域。その小本沖で狙えるのが、深海ファン垂涎のターゲットである「コウジンメヌケ」だ。水深1000m級の深海で深紅のボディが美しい高嶺の花を狙った。
※2013年7月掲載の釣行記です。

深紅の魚体を求めて三陸北部へ!

大型電動リールを使った深海釣りに、根強い人気がある東北地方。これはマダラ、バラメヌケといったターゲットの魚影の濃さからでしょう。

この釣りの面白さを知ってくると、さらに深場を追求してコウジンメヌケに行き着きます。オオサガ、ベニアコウの名称で、東北、北海道ではコウジンメヌケと呼ばれる、深海釣り探求のターゲットです。

しかしこの釣り、近年のライト化、小型電動化には遠く及ばず(試みられてはいるようですが)、道糸PE12号を1200m以上巻ける電動リールに、500号以上のオモリを背負える竿、そして頑丈なロッドキーパーが標準仕様。実際、この釣りのライト化には、道糸を細糸化したときの高切れなどにより、ポイントに及ぼす害を考えて、これを好ましくないと語る船長、釣り師も多く、私もこれには同意です。

ゆえにタックルをそろえるには高額の出費が必要となり、そこに船選びと仕掛けや釣り方、本命に出会えるまでにかかる労力など、敷居の高い釣りであります。

オモリ500号を背負える竿にPE12号の道糸を1400m巻ける大型電動リール。頑丈なロッドキーパーが標準です

遊漁船では最深のポイントを攻める釣り。千葉外房、相模湾、伊豆などでは、水深1000m以上を釣ることもあるそうですが、東北、北海道では水深700mほどのポイントもあり、比較的浅場で狙うこともできます。それでも東京スカイツリー以上ですね(^^;)

こんなディープスポットの彼方から釣り上げる深紅の魚は神々しく見えて、ゆえに荒神メヌケ(幸神という人も)と呼ばれたのですね。実際に釣ったコウジンを手にすれば、あの紅色に感激します。そして、その極上の食味を味わえば、超深海まで追求する理由がわかるでしょう。

東北地方のコウジンメヌケのポイントは、福島いわき沖、青森は八戸から下北半島沖、そして岩手三陸では、大船渡から久慈沖にかけての数箇所が知られています。三陸沿岸は遊漁の深場釣りの長い伝統があり、私も大槌、宮古沖の海溝で超深海釣りを経験しました。ここは深場釣りファンのあいだで、アブラボウズの大物実績でも知られていますね。

コウジンは、繁殖期で群れてくる春から秋にかけてが狙い目。そこで今回、上州屋盛岡店の富澤さんからの紹介で乗船したのは、岩泉町・小本茂師漁港の第58光洋丸です。小本は宮古と久慈の中間あたりですね。富澤さんグループ3名、仙台から私と田村くんの5名での釣行です。

深海ファン憧れの深紅の魚体!

6月11日、午前2時半の出船予定に合わせて小本駅前のコンビニで合流、茂師港に入ります。光洋丸は船幅のある大型船。金澤富寿男船長が岸壁に船を寄せてくれて、タックルをみんなで協力して積み込みます。私と田村くんは右舷、富澤さんたちは左舷に席を決めて出船です。

「途中でアブラボウズ狙ってみますか?」と船長から話されますが、今回はみんな一致でコウジン一途に決まり、ポイントを目指します。ポイントまでは3時間ほどとのことで、キャビンに入って仮眠します。光洋丸のキャビンには、マット、テレビ、電子レンジにポット完備で快適です。

ナギの海を快走して、午前5時に「まもなく着きますよ」とのアナウンス。釣り座のセッティングに取り掛かります。

私の仕掛けはムツ24号のハリにハリス16号、幹糸30号に捨て糸14号の6本バリで、素バリとタコベイトの2通りを準備しました。オモリは500号で、ハリ数、オモリとも、この釣りではライトな仕様。このハリ数ならマグネット板に並べて投入できます。私は最初に素バリ仕掛けをセット。田村くんは夜光グリーンとオレンジのタコベイトを組み入れた10本バリ。富澤さんたちはフラッシャー毛バリと様々です。 

エサも大きめにカットしたイカタン、サンマ、サケ切り身にカツオのハラモと、思い思いの組み合わせで皆さん準備完了。

6本バリが標準なのでマグネット板で投入ができます。幹糸30号1.8m間隔、ムツ24号、ハリス18号80cm、捨て糸14号1.5mが標準仕掛け。エサは大きめ、幅3cm長さ20cmくらいにカット。丈夫で外れにくいイカタン、サケ切り身、カツオのハラモやサンマなど、回転しないように刺すことが重要なポイント
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投入はトモからで、私からオモリ500号を投入。マグネット板に並べた仕掛けがスムーズに入って投入完了。ミヨシ側へと順番に投入を進めます。田村くんは仕掛け絡みで投入失敗、この流しは一回休みとなりました。

着底までは10分近く。カウンター700mあたりから道糸の出具合に注意します。800mで一瞬止まったのを見て、即座にレバーを上げて糸フケを巻き取ります。風なく潮も素直な流れだったので、着底は明確に確認できました。

うねりで上がったあたりで、オモリが海底で立つくらいをイメージして底ダチを取ります。「富澤さんにアタリが出たよ!」と船長。私も少し底を切ってカウントして落とし込み、仕掛けを歩かせてみます。するとウネリで上がったあたりで微妙な竿先の動き。これで1ヒロくらい糸を送り出してみますが、「ここは沈船の残骸があるから、あまり糸を出さないほうがいいよ」と船長のアドバイス。

「幹糸40号以上の仕掛けを使う人もいたけど、それで糸を出しすぎて引っ掛けてしまうと、道糸の高切れも出るよ。オモリだけで捨て糸切れなら良いけど、ここは引っかかるものがあるから、糸の送りすぎには注意ですよ」

このような条件のポイントでは、根掛かりに伴う高切れのリスクを考えて、釣り方と仕掛けのバランスが重要なところ。経験豊富な船長のアドバイスは貴重です。船長は投入前に、私の仕掛け上の道糸に、高切れ防止の工夫をしてくれました。

巻き上げの合図でスイッチオン。しかし私は、竿先が突っ込み根掛かりです。さらにドラグを締めてロック位置にセットすると、スッと切れました。高速で回収すると上2本目で切れていて、やはり送り出したのが原因でしょう。

富澤さんから「ハリ数は5~6本で良いですよ」と言われた理由を、これで実感。大きいカケ上がりや落ち込みの海溝を釣るときとは違って、ハリ数を多くして糸を送っても、良い結果にはつながりにくいのですね。

富澤さんたち左舷では、3人とも本命を浮上させてギャフで引き上げています。3~4kgサイズで、一投目から型を見るという幸先よいスタートです。

ここで富澤さんからフラッシャー毛バリ仕掛けを分けてもらい、エサも下2本をサケ切り身にして2投目。ここでも左舷の富澤さんと三浦さんに本命ですが、田村くんと私には、ホラアナゴとトウジンの類(オニヒゲか?)です。

トウジン、ソコダラ、ホラアナゴの類いが定番ゲスト。シュールな容姿ですが、意外に美味いです
缶詰にもなっているのが、このホラアナゴ。スーパーで探してみてください。これは美味いです
アナゴの要領で捌きました。蒲焼、天ぷらで美味かった!

「次は右から入りますよ」と船長。期待した3投目、底ダチを取ってオモリトントン程度にセットした瞬間、竿先に明確なアタリ。糸を送らずに留めて待ちます。前の田村くんにもアタリが出て、笑顔でVサイン。

しばらく流して全員がアタリを確認、一斉に巻き上げ開始です。500mと200mあたりでガタガタと竿先が動きます。船縁までの巻き上げ時間は30分ほど。このワクワク感が最高なのです。

左舷トモでは5.2kgが上がって、富澤さんも4kg級。続いて私も、船縁停止で仕掛けを手繰ります。前方に浮き気味で一番下に赤い魚影。2.2kgと小ぶりですが、本命コウジンメヌケです!

ミヨシの田村くんも手繰りはじめ、浮いてきたのは4.7kgのコウジン!もう満面の笑顔。この釣りに挑んで苦節数回、ついにコウジンメヌケと出会えました!左舷の三浦さんは200mあたりで外れたらしく、浮き上がりを期待して海上を見回しますが発見できず、次の投入に入ります。

巻き上げ時間は30分ほど。さて本命か!?ワクワクの時間です
本命コウジンメヌケが浮上です!
当日最小の2.2kgでしたが、本命コウジンは最高です!
田村くんも本命を浮上!4.7kgのコウジンメヌケでした
この釣りに詳しい上州屋盛岡店・富澤さんは、さすがの腕前で4kg級を3尾!
当日最大は5.2kg。10kg越えも出るので、これでも中型なのです
三浦さんも本命連発!

全員投入に成功して、竿先の動きに注意して釣り続けます。船長に聞くと、このあたりはカジキ漁のポイントとのこと。「船の近くをカジキが通ることもありますよ。漁でメカジキを突いて腹を割くと、胃袋にソコダラなんかがたくさん入っていてね、深海の底まで行って食っているんだね。特にメカジキはトローリングのルアーなんかは見切る。突いて捕るのが一番の方法だね(笑)」

ビルフィッシュのグランドスラム達成で、メカジキが最難関という話を聞いたことがありますが、驚きの捕食行動です。ベテラン船長の話は興味深く、思わず聞き入ってしまいます。

4投目以降はソコダラ、トウジン、ホラアナゴといった、超深海釣りの定番ゲストが上がったのみで、合計7回投入して沖揚がり。ナギと適度な潮の流れという好条件に恵まれて、5人で2.2~5.2kgのコウジンメヌケを9尾という上々の釣果でした。

素バリ、ベイト、フラッシャーなどの仕掛けの選択、フラッシュカプセルの使い分けなどは深海釣り探求のテーマ。今回は「上州屋盛岡店オリジナル・フラッシャー毛バリ仕掛け」が抜群に当たりました。同店のスタッフでもある富澤さんのハンドメイドなので、在庫は問い合わせてください。タックル、仕掛けなど、さらに詳しくは富澤さんがアドバイスしてくれるでしょう。

タコベイト、素バリなど、エサとのマッチングを考えて。この選択が深海釣り探求のテーマなのです
当日、良かった上州屋盛岡店オリジナルフラッシャー毛バリ仕掛け。富澤さんのハンドメイドなので、購入する際は在庫の確認を

小本沖は小本川の河口から入り組んだ地形で、カレイ釣りマニアが知る穴場的な好ポイント。今年も好調で、光洋丸の二代目若船長が船外機船でカレイ釣りを楽しませてくれます。金澤富寿男船長はメガラ(オキメバル)、ソイに、マダラ、バラメヌケも得意とするところ。シマノ探見丸親機搭載船です。

渓流、アユ釣りの銘川、小本川に、龍泉洞、マツタケに清水など、岩泉町は観光にも絶好地。渓流から超深海釣りまで楽しめる、まさに釣り人の天国ですよ!

全員本命ゲットです!
第58光洋丸(岩手県岩泉町小本・茂師漁港)TEL: 0194-28-2086
金澤富寿男船長とカレイ船担当の若船長が小本沖の釣りを楽しませてくれます
PROFILE:針生秀一

船釣りを中心に、防波堤や河川の小物釣りなど、なんでもこなすオールラウンダー釣り師。全国各地の釣りと釣り具の知識が豊富で、釣りの生き字引的存在。泉区のロックバーラグ(Rag)オーナー。シマノフィールドモニター

 

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※取材・テキスト/針生 秀一
※取材協力/第58光洋丸(岩手県岩泉町小本・茂師漁港)

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