常笑upcoming fishing!(プレミアム版)☆第27回 宮城の秋の風物詩!ハゼをガイド
プレミアム連載:針生秀一さん 第27回 宮城の秋の風物詩!ハゼをガイド
※この記事は2015年10月にプレミアムメルマガで配信したものです。
秋の釣りで、最も身近で馴染み深い魚といえばハゼという人は案外多いと思います。特に仙台近郊の人には海釣り入門がハゼで、これで海釣りに目覚めていったという釣り人は、私はもちろん、まわりにも大勢いますね。
かつては石巻万石浦、松島湾、亘理鳥の海が宮城の三大ハゼ釣り場といわれて、秋となれば福島県相馬松川浦も含めた四大代表ポイントの状況が釣り人の話題の中心になっていました。現在の情報がリアルタイムに広まるネット社会からは隔世の感がありますが、釣具店に通って手に入れた情報を頼りに、仕掛け、エサ、釣り方を練って釣行するのにワクワクしましたね。
初夏の河口域などでのハゼ釣りから、秋になれば松島湾、万石浦、松川浦での船釣りも開始です。松島湾の伝統釣法、ハリを使わずイソメを針金に通して数珠のように縒りこんだエサで釣る、数珠こ釣りはプロの漁法として知られ、現在も行われています。
平成のはじめころ、四大釣り場のどこもハゼが不調で、これが河北新報の新聞記事にもなったほどでした。このとき宮城の釣り人は、東北各地のハゼが釣れそうなポイントの情報収集に走り、それで八戸市の馬淵川、新井田川河口域のハゼ釣りを開拓。そして宮城の釣り人が集中して、地元で驚かれたのが岩手三陸の大槌、小槌川河口エリアでした。地元の人には、遠く宮城から、ゴムボート持参でハゼ釣りに遠征してくるのは信じられないという感じでしたね。
この当時の青森、岩手エリアでは、マハゼを釣りの対象としていなかった。だから釣れましたねぇ、20cm前後のハゼが入れ食いでしたよ。この大釣りの話が広まって、大槌に行くと宮城ナンバーの車がズラリ。知り合いの釣り人と現場でバッタリ会ったこともありました。これから徐々にハゼ釣りが浸透していき、釜石甲子川、宮古の閉伊川、津軽石川、山田湾織笠川などの河口エリアを中心にハゼ釣りが盛んになりました。
船入門にもぴったりな船ハゼをガイド!
今が秋ハゼの盛期。そんな秋ならではの船ハゼ釣りをガイドしてみます。全国でもハゼ専門の釣り船が盛んに出ているのは、東京湾と松島湾、万石浦、松川浦、くらいでしょうか。かつて亘理鳥の海、松川浦での引き船のハゼ釣りも楽しかった。
オカッパリで十分に釣れる小魚に船釣りまでとはと、他地域の人に驚かれるのですが、この船ハゼ釣りの面白さを知ったらやめられない。東京湾江戸前のハゼ釣りに代表されるように、15cm程度の小魚の釣り味のために竿、仕掛け、釣法が極められているのです。入門の敷居低く奥が深いといわれる小物釣りの代表格です。
現在、松島湾の船ハゼのタックルを見ると、振出コンパクトロッド、ルアーロッドなどにスピニングリールというセットが多いようです。以前に松島磯崎港から船を出したとき、都内から転勤してきたという釣り人が、二対の江戸前ハゼの中通し竿で釣っているのを見ました。きれいな曲がりで面白そうでしたよ。それで20cmオーバーのハゼが普通に釣れる松島湾に喜んでいました。やっぱりリールを使わない竿で釣るのは趣が違うようです。
宮城エリアのハゼは越年の二年魚。20cm以上に育つハゼが多く、ジャンボハゼで知られる万石浦では、尺に迫る大ハゼが釣れていたので、それに対応する13号というハゼバリ、仕掛けが作られていました。あの号数は、たぶん宮城エリアの特注だったと思われます。最近はこの号数を見かけなくなりましたね。
水深は2~8mくらいが主体で、オモリは3~8号。松島湾内の各水道域で潮が走るときや、終盤の落ちハゼを釣る10m以深の深場では15号まで使うこともあります。私が船ハゼで使う仕掛けは基本的に一本バリです。
自動ハリス止めのハゼ天秤にタイコオモリや、根強い人気がある赤トンボ天秤を使っています。チョイ投げで探るときは、全長60~70cmの二本バリに弓型ハゼ天秤を選ぶこともあります。
特に赤トンボ天秤を好んで使っています。この形状が微妙な潮を受けて方向が定まるので、柔らかくフワッという誘いのイメージをしやすく、絡みが少なくアタリも取りやすいのです。
ハリは流線、袖、ハゼバリなどの8~10号のサイズが標準。東京湾のハゼ釣りより大き目ですね。それで渓流釣りのヤマメバリもベテランに使われています。細軸、軽量でハリ先が鋭く、掛かりは抜群です。ただハリ先が欠けやすいのでマメなチェックが必要です。ちなみにメバル専用バリも、このヤマメバリがベースになっています。
ハリスは1号前後。糸付きバリにはこのくらいの号数が結ばれていますね。ハリスの長さは主に釣れるハゼのサイズより少し長めにするのが適当です。20cmのハゼ主体なら25cmくらいにすると良いでしょう。
私が船ハゼで使っているのは、ボートワカサギ竿、海タナゴ竿をメインに、チョイ投げで釣るのに宮城エリアの船ハゼ釣り専用に作られていたグラスハゼ竿です。ワカサギ、海タナゴ竿は両軸リールで船下中心の釣り。グラスハゼ竿はスピニングリールでチョイ投げに使います。
道糸はフロロカーボン、またはナイロン1~2号。それにPE0.8号を巻いてある両軸には、先糸にフロロカーボン2号を1.5m結んでいます。先糸の役割は、細いPEラインの穂先への絡みトラブルを減らし、クッションにもなります。
エサはアオイソメが定番で食いも良いですが、手に入ればゴカイが最高です。食い込みがさらに向上します。オカッパリで釣れる10cmくらいのハゼには、タラシを出さずハリ軸に通し刺しのほうが掛かりが良いですが、船で狙う15cm以上のハゼのエサ付けは、基本的にハリに縫い刺してタラシは2cmくらい。食い渋りには、ハリの軸に真っ直ぐ通し刺してタラシは2cm。食い込みが浅いので、これで多めのエサ付けよりも掛かりが良いです。丁寧に誘えばアタリ数も変わらず、むしろ多く感じられますよ。
釣り方はまず少し前方に投入します。底を取ったら竿を立てて、竿先の真下に来るように探ります。この寄せてくるのが良い誘いで、エサが底を這うようにフワッと動かすイメージ。これで赤トンボ天秤の方向づけが効いて、底を切るとハリスが張り、底に着けるとフワッと離れてエサが落ちるという、ハゼの食いを誘う絶好のパターンになります。これで出るアタリはブルブルと大きく伝わるものが多く、そのまま竿を立ててアワセを入れましょう。
それでアタリがなく竿下まで戻ってきたら、ゆっくり竿を上下してエサを踊らせるイメージで、少しオモリを底から離した位置で止め、ハゼのアタリを確かめます。柔軟な穂先の竿なら、その位置で竿先が止まっているように見えます。これが、ハゼがエサを吸い込んだアタリ、いわゆるモタレです。これでスッと軽く竿を立てて掛けるのが理想。大きなアワセは必要ありませんが、60cmくらいの二本バリ仕掛けなら全体を張るくらいに竿を立てましょう。
誘いのパターンは、オカッパリでのウキ釣りが良いように、フワフワとエサが底を這うようなイメージ。手数の多い小突きよりも、ゆっくりフワッと漂わせるという組み立てが効きます。
チョイ投げでも、糸を張ってシェイキングから竿を立ててアタリを聞き、仕掛けを少し浮かせて落とし込み、這わせるように誘い探ってきましょう。アタリからアワセは、竿を立ててリールの巻きでハゼに引かせて掛けるくらいで良く、大きくシャープにアワセを入れる必要はありません。
誰もが手軽に楽しめるハゼは船釣り入門にも最適で、秋晴れの好天の松島湾のハゼ釣りは絶景で趣も抜群。宮城の秋の風物詩といわれます。これからヒネ、ケタハゼ、落ちハゼと呼ばれる大型ハゼのシーズンです。秋ハゼ釣りを楽しみに出かけてみましょう!
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船釣りを中心に、防波堤や河川の小物釣りなど、なんでもこなすオールラウンダー釣り師。全国各地の釣りと釣り具の知識が豊富で、釣りの生き字引的存在。泉区のロックバーラグ(Rag)オーナー。シマノフィールドモニター
※取材テキスト・写真提供/針生秀一