これから夏にかけて期待大!風合瀬沖のアカムツ(前編)
風合瀬沖ってどんな所?
東北でアカムツの聖地と呼ばれている風合瀬沖。風合瀬(かそせ)は青森県の南西部に位置する西津軽郡深浦町にある地名で、この地は東西より吹く風がぶつかる風の交差点であることが地名の由来とされています。
この海域は気象や潮流の変化がとても激しく、北前船が行き交う時代から航海の難所と言われてきました。実際に国道101号を北上していくと、艫作(へなし)迄は風が無く穏やかな海のに、風合瀬に着いたら突然強風になります。
昨シーズンは仙台から車で約6時間、距離にして375キロも運転の上、現地で解散が3回、前日の中止が4回と出船出来ない状況が続き、海に出られだけでも感謝する様な釣りでした。
例年、風合瀬沖のアカムツは海水温が落ち着き安定してくる6月上旬からスタートしますが、今シーズンは例年より海が暖かく、チャンスかも!? と、5月中旬からの釣行となりました。お世話になった船は以前よりアカムツ釣りで通っている船宿さんです。
(※今回、船長さんのご意向により船名や連絡先は非公開となります。ご理解の程お願い致します)
夜明け前の港は静寂を保ち幻想的です。少し沖に離れた弁天島に置かれている鳥居埼灯台はまだ暗く、断続的な光を放ちます。シルエットだけ例えるなら東北のモンサンミッシェルでしょうか?それから瞬く間に西の空が明るくなり島を照らします。時刻は4:00いざ出船。
港を出て暫くすると津軽富士と呼ばれる裾野が美しい岩木山が見えて来ます。青森県の最高峰であるこのお山は、古来から人々が山岳信仰を寄せる山としても知られおり、今シーズンの青森釣行の無事を祈願します。
ベタ凪だった港でしたが、沖に出る程波は高くなり、容赦なく波しぶきを顔に浴びせます。やはり風合瀬!しかし今年初のアカムツ釣り。仕掛けや錘や水中ライトのセット、ドラグ調整、クーラーから出しておいた冷凍ホタルイカの解凍チェック。事前に鯖の短冊をハリに付けたりと、皆真剣な表情でセッティングにも気合いが入ります。
ここで簡単に私のタックルや仕掛けを紹介させてもらいます。ロッドは廃盤になったアルファタックル製「ショートブレード232」。錘負荷100~150号に錘200号を背負わせ、少し負け気味で使用。電動リールはシマノ製「フォースマスター2000mk」にPE4号400m。
仕掛けは胴突き3~4本バリ、幹糸はフロロ7~8号。上から100~150cm、幹間120cm+ハリ数、ステ糸6号60~75cmの親子サルカン接続。ハリスはフロロ5号60cm前後、潮の流れにより55~70cmの間で調整します。ハリはホタ16号。
手持ちで誘いが基本ですが、今回は撮影と釣りなので置き竿が中心と予想。接続部の親子サルカンを取り止め、代わりに8cm幅の遊動式を採用しました。ハリ数は3本で、ハリスは5号65cm前後。ホタハリ16号に自作毛針を装着。錘は200号統一。エサは鯖短冊とホタルイカの抱き合わせ。
マゾイの入れ食いは嬉しい誤算!
一昨日の情報によるとテンカラ(=沖メバル=和名ウスメバルの青森での呼称)釣りの外道で1kg前後のアカムツが3匹程混じり、当れば良型との前情報。本命アカムツの期待が膨らみます。
船の減速がポイントに到着したことを知らせます。軽く短いブザー音が投入の合図。スプールをサミングしながら着底したリールの表示は水深160m前後。
すると左舷艫から早々に電動の巻き上げ音!沖釣りの先輩、浅野さんの竿先が海面にゴンゴンと突き刺さっています。「本命ですか?」と声をかけると、微妙に首を傾げる浅野さん。重量感があり連続するパワフルな引きです。
上がってきたのは1kgは優に超える良型マゾイです。同タイミングで右舷艫は盛岡市の熊谷さんにも連続ヒット!続いて右舷艏は盛岡市千葉さんも良型マゾイを釣り上げます。
撮影している間、底から錘を切っていた私の竿もいつの間にか海面にお辞儀しています。上がってきたのは予想通りのマゾイ。放置した分、1匹オマケのダブルです。煮付けと数日寝かしたお刺身確定!
ここでマゾイだけを狙えばクーラーが大変な事になります。しかし本命はアカムツ!早々に切り上げ移動します。少し気懸かりなのはマゾイの活性が高い=水温が低めということ。アカムツの動きが悪いのでは?と連想してしまいます。
本命のアカムツを狙って!
マゾイ入れ食いポイントを移動してから数投目、「アタりました!」と巻き上げるのは右舷艏の千葉さん。お聞きすると小さなアタリで、引きも若干弱めとのお話。それでも慎重に上げていると段々と引きが明確になってきます。
浮上したのは赤いメタリック色。素早くタモ入れしたのは1kgクラスの良型アカムツ。1番下のルミックスダンサーを装着したハリにヒット!皆さんからおめでとうございますの声。釣り師のハートに火がつきます。
本命を期待したその後は、竿がホワンホワンとサメ特有なアタリの連発!彼方此方で、お祭りや道糸の高切れの慌しさ。皆んなで協力し合って大忙し…釣り上げて頭と尻尾を押さえてハリを外して即リリースしていると、船長さんが「逃がすなら数匹持って帰る」とのお話。皆でせっせと船のクーラーに納めます。
このサメは質の良い肝油がとれることや、背びれに太い棘があることからアブラツノザメと呼ばれ、深場を回遊する深海サメです。第1背びれ第2背びれにとがった棘があり、弱毒を持っています。寒い所を好む事から、彼等が横行しているようではアカムツに適した水温よりは低めなようです。
そんな状況の中、知らぬ間に熊谷さんアカムツ700グラムupを釣り上げ。続いて私にも小さなアタリがあり、気持ち待ってから手巻きで竿先と海面の距離を縮めます。
生体反応を竿先に感じながら頭上に持ち上げてグングングン…乗った!手巻きで数回転、確実にハリ掛かりさせてから慎重に巻き上げ開始。竿先が真下にグッグッと引くが若干軽め。上がって来たアカムツは塩焼きサイズです。
続いて浅野さんも同サイズ。全員がアカボウ(アカムツボウズの略)回避にほっと胸を撫で下ろします。続いてお祭りしながら上がってきたのは熊谷さんのアカムツ。バラさないようにドキドキしながらタモ入れしたのは700g弱。本日2匹目を順調に釣り上げます。
装飾を外してツノザメの猛攻を回避せよ!
何とか本命の型は見ましたが、かなりの確率で先にツノザメに捕まってしまいます。このままでは仕掛けが幾つあっても足りません。次の一手は彼等に見つからないようにアカムツに見つけてもらう策。水中ライトは外さず、青系→定石の赤系へチェンジ。毛バリ→素バリ、夜行錘→鉛錘と装飾(特にケイムラ)を外して地味系にチェンジ!
するとグングンと重量感のあるアタリあり。背後の千葉さんの仕掛けが船上にあるのをチラ見で確認。道糸を幹間分だけ送り出します。暫く待つと竿先が斜めにサッサッサッと入るシャープなアタリを追加。3本ハリに2匹付けたら迷わず巻上げ開始!上がってきたのは上ハリにアカムツと下ハリにマゾイとダブル!
続いての明確なアタリはアカムツよりヒキが暴れん坊的なイメージ。浮上前は水圧の変化で大人しくなるパターンは嬉しい外道の1kgクラスのコアラ(小さなアラの例え)
シンプルにした仕掛けに変えてから好調!キレのあるアタリはアカムツみたいですが、何処かヒキが弱い!やはり海底の水温が低いのか、残り80m位から本命確定と思わせるグッグッグッと竿先が真下に入るヒキに変化してきます。タモ入れしてもらったのは900gの良型アカムツ!ホタ16号がバレ難い部分に掛かっています。
その他にもガヤ(和名エゾメバル)やテンカラ(和名ウスメバル)の刺青バージョンなど色々な魚種が豊富です。
船中4名の釣果はアカムツ7匹、マゾイ29匹、アラ1匹、ムシガレイ2匹、ソウハチガレイ1匹、タラ4匹、エゾメバル1匹、ウスメバル1匹、アブラツノザメ31匹(リリース含む)
今回の釣行で1キロupは姿を見せませんでした。其れならばと2週連続で再チャレンジ!果たしてアカムツの釣果は?キロupは出たのでしょうか?後編へ続きます。
活きエサだけでなく、ホタルイカなど冷凍エサも充実している。仙台からエサを買っていくのに便利なほか、冷凍エサ、活きエサとも全国発送にも対応しているので、事前に釣りエサ屋さんに行く余裕が無い時にも重宝する。お店に行く場合は、仙台港のキリンビール仙台工場向かい、仙台港IC近く。
■TEL:022-786-3580
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東北の沖釣りをメインに赤い魚を狙う船釣り師。最も得意とする釣りは中深場のアカムツ、オニカサゴ、アラを中心とした根魚。目標は東北の超深海釣りの開拓。仙台市泉区在住、職業はロケットエンジン用ターボポンプ計測担当
※取材・テキスト/田村 努
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