豪快かつテクニカルな秋の三陸カレイ船と夜アナゴ船
南三陸町の志津川湾の夜アナゴ船
初秋のカレイは三陸沿岸の湾内も狙い目です。マコガレイにミズガレイ(ムシガレイ)交じりでじっくり誘い釣りを楽しめます。そして夜釣りはアナゴのベストシーズン。漁港の復旧とともに三陸沿岸の夜アナゴ船が出船を再開してきています。
宮城エリアのアナゴ釣り場を代表するのが南三陸の志津川湾。今年は戸倉漁港から出船する「三浦屋」の夜アナゴ乗合船が再開しました。そんなカレイとアナゴを楽しみに、「三浦屋」に行ってきました。
「三浦屋」の夜アナゴは船外機船での少人数乗合で、カカリ釣りで手軽に楽しめます。実釣3時間ほどのショートタイムで料金も手頃。小突き釣りのアナゴは実に面白く、そして食味も抜群です。
当日は10人が集まり2艘出しになりました。私は三浦康文船長の「朝日丸」に決まって4名が乗船。夕方の日没前に出船しました。
ポイントは青島から沖目の筏まわりです。この青島、正式名称は椿島ですが、青緑濃いタブノキに覆われている島なので地元ではアオシマと呼ばれます。隣には天女伝説のある竹島が並んでいます。島の向かいの津の宮漁港には、天女さまを祀った天女塚があり、津波被害から復旧されています。良い釣果で楽しい釣りができますように、天女塚に向けて祈りました。
15分ほど走ってサクネの内側のホヤ筏で開始です。オモリは30号。「三浦屋オリジナル直結アナゴ仕掛け」にハリスは「ホンテロン5号」。ハリはささめ針の「夜光アナゴ14号」を結びました。このハリは掛かり良く、ハリ外しも手早くできて気に入っています。
アオイソメを縫い刺しにして投入。水深35mほど、オモリが浅く刺さるような砂泥底です。オモリで底を撫でるように上下して誘っていると微妙な違和感。即にアワセを入れると「グン!」という手応え。最初のアナゴは40cmほどのサイズ。手早く外してバケツに入れます。
続けて50cmとサイズアップ。アナゴの寄りは良く、小突きに反応してアタリが続きます。皆さん三浦屋仕掛けにアオイソメで、船長のアドバイスを聞いて誘いを組み立て、次々にアナゴを釣り上げます。
アナゴ釣りは小突きの誘いを基本に、それでアタリを取ってアワせにいく組み立てです。聞きアワセで掛けにいっては釣りが遅く、数を伸ばせません。実際に誘いとアワセの技量が釣果にハッキリと出ます。
宮城、岩手でのアナゴ釣りでは、サンマの切り身やイカタンを使い、これに仕掛けは両天秤という組み合わせが古くからの定番で、現在もこれで釣っている人が多いですね。実際に東京湾で使われているツリガネ型などの短ハリス仕様の仕掛けや、三浦屋直結アナゴ仕掛けにアオイソメエサでの釣りと、この両天に切り身エサでの釣りを比べてみると、明らかに釣りの速さが違います。両天秤と直結仕掛けの感度の違いに、イカタン、切り身とイソメの食い込みの差を実感するでしょう。切り身、イカタンが有効になるのは、避けられないエサ取りのスムシ(ヨコエビ類)が大量に湧くときです。
アナゴのアタリは、ヒネリ、トルネード噛り付き、食い上げなど様々。これを即に掛けにいかないとハリを呑まれ、仕掛けに絡みつかれることにもなります。明確なアタリを待っていては手返しが悪いのです。
10時前には船中60本を数えました。最後の筏では60~70cmの極太が連続で上がって10時半に沖揚がり。35~72cmのマアナゴが船中72本、私は22本の釣果でした。両天秤に切り身で釣っていた方々は10本に満たない本数で、当船4人との釣果の差に驚いていました。
濁り時のカレイ船はマアナゴ期待!
志津川湾のカレイも面白い釣りができました。台風のシケ後で底荒れの濁りが残り、条件は良くなかったのですが、カカリ釣りでじっくりと誘って釣るマコガレイの釣り味は格別でした。
横浜在住の釣友、伊井泰洋さんと2人で三浦友和船長の「明丸」に乗船。数箇所の筏まわりにシュウリガイを砕いたコマセを撒き入れて、湾口の野島の内側の筏から開始です。
水深は40mほど。大きめのストロークでシャクり、一旦止めてから細かい小突きで誘ってみます。一発目のアタリはプチッと微妙なもの。すかさず掛けにいくと長物系のうねる引き込みで、これは50cmほどのアナゴでした。続けて友和船長にも70cmクラスの太いアナゴです。やはり底荒れで潮も濁っている。
「これマアナゴだよね。こんなサイズは東京湾ではめったに釣れない」と伊井さんは驚きです。
移動して、筏に掛からずに流しで釣ります。これで25~30cmクラスのマコガレイを連続で釣ります。手数の多い小突きよりも、スローアンドクイックで食わせる間を入れた誘いの組み立てが良い感じ。
アタリはフワッと落とし込んだのに反射食いしてくるものから、吸い込んで止まる微妙なモタレ、オモリにぶつかってくるように明確に激しく出るのまで色々です。一箇所で固まって釣れるわけでなく、移動を重ねて拾うように釣っていきます。
30cm前後のマコガレイ中心に、硬い砂底ではマガレイも釣れてきます。しかし誘いパターンが合わないとアタリが出なくなるシビアな場面も。これで誘いを見直して、合う誘いの組み立てを探ります。バリバリと釣れるときと違って、じっくりと誘い釣るのが面白い。
午後一時に納竿。20~38cmのカレイが船中25枚にアイナメ、アナゴも数多く入りました。40cm超えは釣れませんでしたが、肉厚の尺マコが主体で手応え十分でした。
ヒラメ船も10枚越えが3名と好調。店舗に戻り、三浦明船長を中心に、みんなで楽しく茶飲みの談笑。「三浦屋のカレイ釣りは、釣りだけでなく色々な面白さがある。年に一度はやりたいね」と伊井さん。
これから秋に向けて大マコが期待できる志津川湾。夜アナゴも、地元で落ちハモと呼ばれる大型がそろってきます。シケ後の底荒れには日中のアナゴ釣りも面白く、これを狙うアナゴマニアも多いのです。抜群の釣り味を楽しみに、秋の釣りに行きましょう!
※取材テキスト・写真提供/針生秀一
※取材協力/三浦屋(宮城・戸倉漁港)