秋田能代沖の高級魚リレー![のどぐろと鬼カサゴ]
狙うは沖釣り界の赤い宝石
アカムツといえば、かつては幻のターゲット。中深場の宝石と呼ばれる極上の食味の高級魚で、根魚マニアが追い求めるレアな釣り魚でした。
しかし、各地でポイントが開拓されて、茨城の鹿島、波崎では、夏から秋の看板釣り物として、釣り河北釣果速報にも釣果情報が出るようになり、一般に知られる人気ターゲットになってきています。
東北では、日本海側で以前から漁の実績があり、ノドクロと呼ばれて知られていましたが、遊漁の情報は少なく、ごく一部の釣り人のみで釣られていたようです。
近年、秋田県能代沖のアカムツポイントを開拓して、コンスタントに釣果を出している遊漁船が日和丸。アカムツ狙いに通っている釣友の田村くんが盆休みに連釣して、1.3kgの良型を頭に、8月17日は9匹、18日には6匹という好釣果。これを聞いてはじっとしていられない!さっそく、上州屋盛岡店スタッフの富澤くんと釣行計画を企て、オニカサゴとのリレー釣りでリクエスト。9月5日、田村くんと3人で能代に向かいました。
道中、三種町の信太幸雄船長の自宅に寄り、船長を乗せて能代港へ向かい、午前5時に岸払い。船長から、「秋田場、焼山、テリ場といったところを回って釣っていきますよ」と話され、北沖に船首を向けます。
100分ほど走って日和丸はスローダウン。南東の風で多少波立っていますが、釣りに支障はなく、降雨もありとの予報でしたが、好天の夏空が広がり、暑くなりそうです。
使用オモリは200号、仕掛けは胴突き3本バリが標準。私はハリス60cmでハリ間1.5m、捨て糸8号1m、幹糸10号、ハリス5号にムツ針16号という、茨城方面と同様なライト仕様です。エサはホタルイカを主軸に、サバ切り身、サケ皮と冷凍エビも用意しました。
アカムツを釣るためには、外道対策が課題のひとつ。ユメカサゴ、ドンコ、オキメバル、ソイ、ムシガレイという嬉しいゲストが揃ってきますが、これをかわしてアカムツに食わせなければならないのです。
タナを高めに取る、捨て糸を長くする、水中ライト、夜光玉、タコベイト、フラッシャーなどのアピールグッズを外す、といった対策を取るのですが、田村くんに聞くと「他地域に比べて外道は少ないです。だから底際の低いタナ取りでも大丈夫、アピールグッズも有効に使えますよ」との話。
しかし、「近日はスルメイカの群れが入ってきて、これに妨害される」と船長。まぁスルメイカは今季の太平洋側で不調なので、これはむしろうらやましい。
田村くん、富澤くんはフラッシャー毛バリ、タコベイトを入れた仕掛けで、私も小型水中ライト「幻海灯」の赤を組み合わせました。さて反応はいかに?
「140mです、やってください」の合図で、ホタルイカとサバ切り身をセットした仕掛けを投入。着底するとオモリが刺さる泥底です。アカムツは、険しい根よりも岩礁周辺の砂泥底を好んで回遊するらしく、私がアカムツ狙いで釣行した茨城、伊豆方面でも同様に、岩礁帯を外れたところを流して釣りました。
仕掛けが安定したところから2mほど誘い上げて、ゆっくりと竿でアクセントをつけるように降ろしていきます。するとグワングワンと揺れるアタリ。これを巻き上げると大型スルメイカが掛かっていました。富澤くんもスルメイカを取り込んで、「三陸、仙台湾にも回遊していってほしいですね(笑)」。う~ん、イカヅノを落としたい…。
高級魚アカムツは丁寧かつ大胆に取り込む
アカムツの釣り方の基本は、底から5mくらいまでを、誘い上げと落とし込みを繰り返しながら上下に誘います。速い落とし込みで底をオモリで叩くとアカムツが警戒するので、ソフトな誘いが肝要です。
しかし、200号で手持ちの誘いは厳しい。1mほどの波で船が上下するので、置き竿でもほどよい誘いになりそう。手持ちと置き竿を交互に繰り返して釣っていきます。
反応を探し、数回移動しましたが、ムシガレイ、スルメイカがポツンと釣れたくらいで2時間経過。着底して斜めになった道糸を、竿とリール操作で取り直すと素直に手前に戻ってくるので、底潮の動きがイマイチのような感じです。
移動して150mダチで投入。緩くかけ上がるような起伏です。すると富澤くんの竿に明確なアタリ。巻き上げ中も竿先がガンガンと叩かれています。道糸を手繰ると海面下に赤金の魚影「やった、アカムツです!」手早くタモに収めました。30cmクラスの大本命が掛ってきたのは一番下のハリで、「落とし込みからタルマセで食ってきましたよ」との話。
続けて田村くんにも本命のような鋭いアタリ。慎重に手持ちで巻き上げています。私も誘い上げから落とし込んで竿をキーパーに置き、田村くんの撮影にまわります。
「針生さんの竿にもアタリですよ!」と富澤くん。すぐに席に戻り、リールをスイッチオン。楽速15ほどで、船が持ち上がったときにドラグが滑るくらいにコントロールして巻き上げます。途中で激しく竿を叩く引き込みに、思わずドラグを緩めました。
残り30mあたりで、さらに強い引き込み。「これはたぶん、大きいノドクロだね~」と船長。しかし船べり停止で道糸を手繰った瞬間、スッとテンションが消え、海底へ走り去る魚影。うかつにもバラシです。
「ゆっくり巻きでドラグを滑らせすぎても、ハリ穴が広がってバレるのさぁ」と船長。アカムツの口元はアジのように薄い膜で、ここにハリ掛かりするとハリ穴が広がり、ちょっとした緩みで外れてしまうのです。アカムツは水圧変化に強く、海面でスッポ抜けると、即座に海底に泳ぎ去ります。巻き上げ、取り込みは一定のテンションを保つことが重要ですね(実感です(>_<))。
田村くんはアカムツを取り込み、これも一番下バリです。やはり潮が効かないためか、アカムツは底際を泳いでいるようです。
潮上がりして投入。すると富澤くんに鋭いアタリで本命アカムツです。これを撮影していると、私の竿にも大きなアタリ。今度は注意して、手持ちで慎重に巻き上げると、中層で激しく重い突っ込み。これがアカムツなら夢の2kgオーバーか!?
富澤くんがタモを構え、キーパーに竿を置いて道糸を手繰って引き上げると、海面下に茶銀の魚影。「タラですか?!」という声に一瞬落胆、しかしこれは違った。タモに入ったのはアラ!超美味な魚で最高の獲物。計測すると2.7kgあります。いままで40cmくらいの小アラしか釣ったことがなく、これで自己記録更新。いやぁ嬉しい!しかし、ここから沈黙となり「オニカサゴに行きますか」と船長。みんな同意して、テリ場に向かって走ります。
後半オニカサゴにリレーして釣果充実!
潮回りして投入の合図。仕掛けは腕長60cmの天秤に、ハリス8号、ムツ針18号の全長1.8mの2本バリ仕掛け。エサはサバの切り身を長めの短冊に切ったもの。
着底すると、若干硬めの砂泥底。オモリを立て起こすように上下して誘うと、モゾモゾと鈍いアタリ。重くうねる引き込みは、40cm近いムシガレイでした。同時に田村くんには1kgほどのオニカサゴです。
「ポイントから外れたねぇ、上げてください」と船長。オニカサゴは岩場の上よりも、際の砂泥底に多い魚。小岩に模して、小魚、エビなどを捕食しているのでしょう。
船長は潮上がりして、根際に沿って流し直します。大きく誘い上げて上で止め、ゆっくり落としていくと、コン!と明確なアタリ。これは間違いない、と一呼吸おいて竿を立て、巻き上げ始めると、途中でゴゴンと強く引き込んできます。この感触がたまらない!タモに収まったのは1.2kgのオニカサゴです。トモの田村くんは2匹目のオニカサゴを取り込み、各地で経験を積んだスキルを発揮です。
ここで移動となり、ポイントを広く横流しするとのことで、左舷に3人並びます。私は久々の横流し。着底して仕掛けを持ち上げ、再び糸を出して底を取ることを繰り返すと、ククッというアタリ。上がってきたのは30cmほどのマゾイ。ここから私と富澤くんにはマゾイとムシガレイが連続で釣れてきます。
しかし、トモの田村くんにはオニカサゴが連発で、「やっぱり私たちの釣り方は、三陸でいつも釣っているソイとヒガレイに合うのでしょうか(笑)」と富澤くん。じっくりと田村くんの釣り方を観察すると、竿の持ち上げと落とし込みの間合いの取り方が、船の流れに合わせてスムーズです。
私たちはこのタイミングが掴めず、止めが長く浮かせ過ぎになり、オニカサゴよりもソイ、ムシガレイが食ってきてしまうようです。田村くんは最後の流しでもオニカサゴを釣って、6匹のオニカサゴをゲットです。
船中アカムツ3匹、オニカサゴ9匹に、アラ、マゾイ、ムシガレイ、ワラサ、おまけにスルメイカまでとゲスト多数。色々な魚の引きを楽しんだ上、極上の魚を味わえたアフターフィシングも最高でした。
能代沖アカムツの乗っ込みは8~12月くらいと思われ、オニカサゴは、ほぼ周年狙えるでしょう。極上の食味の魚は釣り味も抜群で、今が絶好の季節。「ノドクロは探し当てるのが難しいときもあるけど、オニカサゴは安定して狙えるねぇ」温かな秋田弁で、信太船長が能代沖に導いてくれます。ぜひ一度足を運んでみてください!
船釣りを中心に、防波堤や河川の小物釣りなど、なんでもこなすオールラウンダー釣り師。全国各地の釣りと釣り具の知識が豊富で、釣りの生き字引的存在。泉区のロックバーラグ(Rag)オーナー。シマノフィールドモニター
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※取材・テキスト/針生 秀一
※取材協力/日和丸(秋田・能代港)