手軽にオフショアを!東京湾サーベリング
タチウオ狙いで東京湾・金沢沖へ
台風の影響でお届けしようと考えていた宮城、新潟釣行のスケジュールがずれてしまい、更に海況が落ち着くのに時間が掛かりそうなため、こんな時には東京湾で本格シーズンになった魚を狙ってみようということになり、少しでも東北エリアの船釣りのヒントになるテーマをと考えていました。
今回お届けするのは東京湾のタチウオ。この釣り物の経緯を説明しつつ、裏話を交えて解説していきたいと思います。緊急事態を説明して快く承諾してくれ、お世話になるのが東京湾金沢漁港の忠彦丸さん。以前もライトタックルでお世話になった船宿さんです。現在は午前船でタチウオ船が出ています。
今回狙うタチウオ。実は業界にとってのヒントが隠されているのです。それはエサ釣りとルアーの同船が可能で、1隻で済むこと。さらに、「テクニック」次第で両方のスタイルに釣果のばらつきが少ないこと。エサ釣りで竿頭になるには「カワハギ」並みに誘い、掛けるテクニックが要求され、ルアーはタックル、パターン、ルアーの形状、カラーなどのセレクトがカギになる。テクニックで差が出る楽しみがあるため、「今日は失敗したな…来週また来よう」という感じになりやすいわけです。船は現在、ルアー船とエサ釣りの船が有りますが、ほとんどのエサ釣り船でルアーの同船が可能。電話した時に「ルアーで…」と言っておけば間違いないです。
東京湾タチウオゲームの歴史を振り返る
さて、タチウオのルアー、事の発端は、十数年前、東京湾の「ルアーフッコ船」として出ていたルアーのシーバス船。それまでのミノーを使った夜の釣りから、後のバスブーム到来あたりから日中に反応を追うメタルジグを使うスタイルでシーバスが大人気に。一大ジャンルを築いたワケですが、ここで問題が発生。ポイントに着いた時に「すでに船が一杯で入れない…」ということがあったり、漁師さん達から「このままやったらスズキが釣れなくなるかもよ…」という信憑性の高い情報も得ていて、「何年続くか?」が問題でした。先に手を打たなければ…と、他のターゲットを探す事になったのです。時間的にも電車の時間に合わせて出船時間を設定している所が多く、この辺の事情も考慮に入れて考えていくことに。青物も確かに回遊して釣果が上がるのですが、季節的に他のエリアとバッティングする時期。こうなると…フィッシュイーターで、青物がシーズンオフ、ルアーのお客様が減る季節に最盛期を迎えるターゲット。それがタチウオだったのです。
これが上手くいけば、「オールシーズンオフショアルアーのジャンルが確立できる」と考えました。あたかも、ソフトルアーでは駿河湾でエコギアさんが展開中。しかし、ここからが大変でした。ルアーなどというものは、まだまだ「邪道」とされた時代。「若い奴がチャラチャラ」というイメージが、おやじ文化に合わなかったわけです(昔は今とは比べ物にならなかった)。当然、エサ釣りの船しか無く、仕立船での釣行。当然、料金もかさんで大変でしたが、常連さん達が「やってみようか?」とエサ釣りの人も巻き込んでトライ。
東京湾の伝統的な釣法に「カットウ」という釣り方が存在していて、当時もポイントが深くなってしまったために行っている船宿は有りませんでしたが、鉛にハリが付いた古くからの道具が有ったので「間違いない」と確信。ここでも問題が、近くの船から「ルアーは遠慮してくれ」、「魚が散る」などのお叱りを受けながら「まずは釣果を出すこと」を念頭に行いました。その頃は、販売店でも売れるシーバス用の40~60gというジグか、200g以上のアブラソコムツ等を狙うメタルジグが殆ど。絡まればルアーのせい、釣れなくてもルアーのせい…と辛い状況でした。「こうなったら良いものを作るしかない…」となります。
ここで最大のヒントとなったのは…船釣りの年齢層の高さを味方に付けること。難関であった部分を逆に考えてみたのです。ベテランで毎週通っている様な方達に当然ルアーロッドなど有る訳が無い。この人達がルアーを使える様に作れば…。テストの結果、ポイント的に、100g前後のジグを使う展開が想像できました。この重さは、他にも汎用が効き、ビギナーにも使える重さ。ロッドは、シイラ用、ライトな青物用が使える設定。ラインは、当時はPEと言うよりも「新素材」と呼ばれていましたが、エサ釣りのベテランさんは当たり前のように太いものを使っていたので都合がいい。「であれば150gまで作ろう」と。これならベテランさんのエサのタックルでも可能です。これが上手くいき、マリアが「サーベリング」と題して(マリアが作った造語なのです)、各船宿に「同船可能か?」、「ルアー船なのか?」を聞き、一覧表を各小売店に配布。ベテラン、常連さんを味方に付けたのです。この時も、「一社だけではダメ」と販売店のスペースまで考慮。メーカーが多ければタチウオ用ジグの販売スペースの確保ができる。この時マリア、フジワラ、デュエルさんというライバル各社が「タチウオ用」ジグの販売をしていました。ライバルでありながら一つのジャンルを作る。厳しくもあり楽しい頃のお話です。
金沢沖は船上も海上も大賑わい
釣行の方はというと、時は9月24日。休日ということもあり大賑わい。各釣り物トータルすると、女性が占める割合は2割近く。本当に多くなりました。今回のタチウオ船だけでも4名の女性。そこへ、ワラサ、各ライト系の釣り物が有るのですから、女性が多いのも頷けるわけです。安田船長の操船で午前7時30分に出船。ポイントは観音崎沖の水深80m前後。
ポイントに着くと、「お待たせしました。そこから10m位誘ってみてください」とのこと。「くっ…辛い」。そう、メタルジグで誘い込む幅まで反応が持ち上がるかがルアーの勝負。この反応が上がって来るとルアーに有利になるワケだ。また、ルアー、エサ釣り共に、お互いのヒットパターンを共有出来るメリットもある。「エサであの誘いとスピードなら…」とか、「ルアーで食っているならあのスピード」などなど…。各船同士も接近戦なので、他の船の釣れている人を参考にすることも重要。
ルアーには厳しい状況からスタート
投入すると、「酷いな…」潮が2枚どころか3枚潮という感じで、水面下、中層、底方向とスピードが違う。このことはラインを見ているとよく判り、沈んでいくジグは左に、ある時からラインが右へ、さらに上がって来るジグは正面からみたいな感じ。当然、ジャークのフィーリングも悪く、80号を使うエサ釣りの人でも底ダチを間違えてしまうような状況。
このルアー船で極細PEが必要なのは、エサ釣りの人達とのバランスにも関係があります。80号は300g。約3分の1の重さのジグを沈める訳ですから、抵抗の少ない極細糸を使用する。フォールでのバイトも多いので、ベイトタックルとの組み合わせでセンターバランスのジグが多くなりました。これで効果がある場合はルアーが有利。しかし、この日の様なコンディションの場合は非常に辛く、テールウエイトでジグの姿勢を決めてフォールするテクニックも必要。同船するとテクニックが身に付くわけ。エサ釣りの人に迷惑かけられないですからね。まして極細PEが絡んだら高くつきます(笑)。
暫くすると、隣でエサ釣りをしていた、ナイスガイ三沢さんにヒット。その後もやはり棚が低いためか、低い棚で勝負が出来るエサ釣りが有利な展開が続く。底に着く瞬間、ジグが吹き上げられる様なフィーリング。底から約10m付近。タチウオの反応はこれより下ということが理解できます。まして、潮の速度が違うということは水温が違う。違う水温まで魚は追わないことが多い。怖いのはこの下の反応の活性が高い場合。「底に着いたのかな?」と油断するとルアーが無い…。また、ジャーク時にも合間にジグが横に向けばブレイクということもありえるのだ。
そんな中、私にヒット!引きからしてスレのフィーリングだ。掛かった時の感触が悪く、ヒットレンジでジグが横を向き過ぎているのだろう。「もう少しの辛抱」と石井さんに告げてタックルをチェンジ。
フィーリングが悪いので、センターバランスタイプからテール重心に。重さも120gから150gへ。すると私にヒット。着底後、テンポ良く細かく数回ジャークしてスローにした瞬間だった。実はこの方法も危ない。勢いよくタチウオが追って来て、バイトの瞬間スローになるとジグ上部へバイトしてしまう。こうなるとタチウオのボディーにフッキングして、リーダーの部分まで口が届いてしまう。テールに上手くフッキング出来るスピード、パターンを読むことが大切になってくる。上がって来たのは1mのタチウオ。石井さんにもヒット。コンディションが少し良くなってきた。
後半はパターンがハマり連続ヒットも!
数本をヒットさせた所で石井さんはタチウオスペシャルカラーがある120gメタルフリッカーへ。これも上手く嵌りヒット。フォール時に横を向かせない様に軽く止めながらフォール。底から5~6mでのヒット。私は150gから110gのテールウエイト、シーフラワーへ。この勝負時に一気にルアーをチェンジ。連続でヒットさせることが出来た。全て口にフッキング。引きは、長いボディーをくねらせて下に下がるパワーのある引きだ。この場合も活性が高いと、直ぐに群れから引き離さないと他のタチウオが奪いにバイトしてきてしまうケースも。ルアーを咥えて暴れれば「キラキラ」させてしまう訳で…。皆さんもカモメのエサの奪い合いを見た事があると思うけれど、海底でも奪い合いなのだろう。
そんな感じであっという間に午前船終了。潮が前半のうちから後半の様に流れてくれれば最高でしたが…。午前船の釣果はトップ12本だったが、この2日後トップ27本。こんな時に行ければね…。そんな感じで、港に着くと「山口さ~ん」と女性の声。一瞬、「やばっ」と何故か緊張が走る。「おおっ」金井恵美さん。デュエルテスターの彼女、お友達と来た様子。で、不完全燃焼の石井さんが、「恵美ちゃんも来たんだから一緒にやって行こう」と残業決定。釣り物は午後のライトタックル金アジ。「道具が…」というと後ろから「あるよ」と忠彦丸の女将さん。う~ん。確かに手軽だ。
午後のライト金アジ船では女性陣が大活躍
ここからは女性陣の独壇場。ダブル有り、良型マアジありで盛り上がったのでした。流石に金井さんは手慣れた物。石井さんは午前中のうっぷんを晴らすかのような爆釣。と、この3人にマアジの釣果を超えられただけでは無かったのです…。実は、タチウオで苦戦している時こんなメールが、「山ちゃん、今日も釣りかな?根魚釣りでルアー回収中にこんなのがヒット…大きいでしょ…」と、新潟からのメール。そこに写るは恐らく指9~10本サイズ、150cmはあろう超大型タチウオ。アングラーはあの児島玲子大先生。私がタチウオやっているとは知らないはず、それが…。「ありえな~い」と涙目に…。このダメージが尾を引いた事は言うまでもありません。そんな感じの楽しい…スクランブルの釣行でした。
・ロッド:青物用ライト系ルアーロッド80~100g対応、7フィート前後、東京湾ベイシステム系ルアーロッド(硬め)
・リール:中型スピニングリール(ハイスピードタイプ)、小~中型ベイトリール(ハイスピードタイプ)※ハイスピードは食い上げ対策。
・ライン:PE1号+フロロカーボン製リーダー25~30Lb、先に40~50Lb10cm
・ルアー:シーフラワー110~150g、メタルフリッカー100~160g(マリア)
・フック:タチウオ用トレブル、または細軸トレブル1~1/0番
・竿:2.1m前後のライトタックル用ロッド、東北カレイ用でも代用可能
・ライン:PE1.5号前後
・リール:小型両軸リール
・仕掛け:ライト天秤、ライトビシ40号(ミンチ)、ライトクッション1.5mm/20cm、ライトタックルアジ仕掛け(商品は全てヤマシタ)
・エサ:エサ玉S~L(ヤマシタ)
石井ちか江先生のお手軽釣魚料理教室
【作り方】
タチウオは3枚におろすと身が縦に割れて削ぎやすい。太めの糸造りのようになるので皮一枚残して削ぎ取ります。銀皮造りは薄く、そぎ切りにして完成
タチウオといえばこの時期、塩焼きが定番。アレンジしてニンニクオイルで焼きます。
【材料】
タチウオ、オリーブオイル、ニンニク、しょう油
【作り方】
①内臓を出したタチウオを食べやすいサイズにブツ切り。タチウオはウロコが無いので下準備も簡単です。
②飾り包丁を入れておく。
③フライパンにオリーブオイルを敷き、スライスしたニンニクを炒める。
④これでニンニクオイルの出来上がり。
⑤そのままニンニクがキツネ色になったら、タチウオを入れて焼く。少し焦げ目がついたらしょう油を軽く入れて仕上げる。そして完成です。
※材料も少なくお手軽です。ニンニクと合わせてどうぞ
【材料】
マアジ、味噌、砂糖、酒、ごま油
【作り方】
①味噌と砂糖は1:1位で、酒少々でのばしながら混ぜていく。ごま油を少々入れる。※この味噌は色々な物に使えるので多く作ってタッパーに入れておくのもいいでしょう。
②グリルでマアジを焼く。焦げ目がついたらマアジに味噌を塗り再び焼く。味噌に焦げ目がついたら完成です。味噌を多めに付けるのがポイント
【船宿:忠彦丸(神奈川県横浜市・金沢漁港)
午前タチウオ船、午前・午後LT金アジ乗合船ともに6,000円(エサ+氷付)、女性とお子様はほぼ半額、男性ホームページコピー持参で全乗合船1,000円引、午前午後のリレー乗船は3,700円など多様な割引制度、サービスも充実している
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横浜市在住のライター&フォトグラファー。元2輪レーサーで、「宮城ササニシキレーシングチーム」を結成するなど、宮城や東北にも縁がある。現在は大好きな釣りと魚を求めて各地を旅するのが楽しみ。ヤマシタ・アドバイザリースタッフ、マリア・フィールドスタッフ。ブログShisen
※取材・テキスト/山口 充
※取材協力/忠彦丸(TEL:045-782-3135)