エサにこだわる鳥の海沖ヒラメ釣り
今季のヒラメ釣りはエサ使いがカギ!
東北太平洋側のヒラメ釣りでは、活きエサにカタクチイワシを使うのが普通だったが、今季は震災の影響でカタクチイワシの供給がままならず、関東方面から輸送したマイワシをエサに使っている。マイワシエサのヒラメ釣りは、亘理や塩釜などで、カタクチイワシが手に入らない終盤戦のパターンとして定着していたが、夏場から使うのは初めて。マイワシは小羽~大羽と呼び名が変わるほどサイズがまちまちで、20cmほどの大羽は大型狙いにはいいのだが、小型のヒラメ相手だと、さすがに若干食いが悪くなる。
大羽のマイワシを使用するときに欠かせないのが、仕掛けの孫バリだ。孫バリとは、親バリの先にハリスを伸ばして2個目のハリを付けた仕掛けのこと。カタクチイワシを使っていた頃は、小型で細身のカタクチに負担をかけないために孫バリ無しの1本バリが主流だったが、15cm以上のマイワシは孫バリ仕掛けを使うのが普通。作り方は、最初から親と孫を結んでもいいし、親バリ仕掛けに後から孫バリを追加する場合もある。ハリのサイズは孫を1サイズほど小さくする人も多いのだが、この日同船した針生秀一さんは親と孫に同じサイズのハリを使っていた。その針生さんに孫バリの使い方を聞いてみた。
「孫バリはイワシの腹に刺す場合と背に刺す場合があります。ヒラメはイワシの腹に噛みつくことが多いので、内臓にかからないように腹側に刺すのが一般的です。背に刺すと食い込みが少し悪くなるので、ヒラメの活性が高いとき。背だと根掛かりしにくいのが利点ですね。あと、孫バリをフリーにする方法もあって、これはイワシが自然に泳いでくれます。孫バリがスレ掛かりしたり、イワシに刺さってエビになったりするので、混雑している時にはオススメできませんけど、今日は平日でかなり空いているので、まずは孫バリフリーで攻めてみようと思います」
針生さんは孫バリフリーでスタート。エサ付け方法は…まず親バリを上アゴの硬い部分に刺す。このとき、イワシの目をかくすようにするとあまり暴れない。孫バリは10~15cmの孫ハリスを付けてフリーにする
もっとも一般的な孫バリを腹に掛けるエサ付け方法。ヒラメはベイトの腹にかみつくことが多いため、自然に食わせられる。内臓に孫バリが刺さるとイワシが弱るので、肛門の後ろあたりに浅く掛けるように刺すのがコツ
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ヒラメ釣り経験者は序盤から良型を釣り上げていたが、この日が初めてのヒラメ釣りだった田村さんになかなか1枚目が釣れてこない。田村さんの竿にもヒラメらしいアタリが何度かあるのだが、待ち切れずに早アワセをしたり、掛かりが浅く途中でバレてしまったりしているようだ。
すっかりさじを投げてしまった様子の田村さん。あきらめ半分になって置き竿で勝手にヒラメが食うのを待っていると、見回りにきた針生さんから、「ちょっとなにやってんの?そんなんじゃダメだってー。竿はしっかり手に持って誘わないと。ヒラメは上の方を見てるんだから、常に底から上の層でヒラメにエサをアピールしないとダメなんだよ」とアドバイス。
手持ち竿で誘い始めると、しばらくしてすぐにアタリがあった。またすぐに合わせようとする田村さんに今度は、「まだダメだよ!もうちょっと食うまで待たないと」と横から一声。ヒラメがイワシをかじり始めたら、しっかりとエサを食い込んで、竿先から中ほどまで入り込むまでじっくり待つ。もしもヒラメがイワシを離してしまっても諦めてはダメ。もう一度イワシを見せてから落とすと、ヒラメは諦めずに食ってくることがままあるのだ。
そうこうして、何とか1枚目のヒラメを釣り上げることができた田村さんだったが、どうもイワシの扱いが粗いのが、針生さんの目に付いたようだ。「エサのイワシも安いものじゃないんだし、できるだけ少ないエサで多くのヒラメを釣るのも腕のうち。イワシを弱らせないようにエサ付けはできるだけ手早くね」。そしてイワシを投入するときも、なるたけスムーズにして、丁寧に沈めるといいそうだ。
また、田村さんの隣の釣り座にいた和地さんは、「つりえさマリンの店長として何としても銀兵でヒラメを釣りたい」と、ひたすら銀兵を使用していた。銀兵はイワシなどに比べれば川魚特有のヌメリが強く、噛みついたヒラメの歯がすべりやすい傾向があるのだが、竿と糸の操作でうまく食い込ませることさえできれば、サイズ的にも十分使える。和地さんは田村さんに続いて針生さんのレクチャーを受けて、誘いから食わせの手順を丁寧に実践。すると、今まで逃していたアタリをしっかりモノにして、やや小さめながら本命のヒラメを釣ることができた。
過去に銀兵でヒラメを釣ったことがあり、この日も和地さんと一緒に銀兵を使った戸島和彦さんは、「イワシは回遊魚なので、常に泳ぎ回っていないと死んでしまいますが、銀兵の場合は泳ぎ続ける必要が無いので、そのままにしておくとじっとして、あまり泳いでくれません。だから、たまに竿をあおって喝を入れるようにするとイイんです。底から少し上のタナで泳がせて、魚に気付かせてやればヒラメはちゃんと食いますよ。ひと口サイズなので、食い込みはいいくらいです。ヒラメに食われなければちょっとくらい粗く扱っても3投くらい平気な丈夫さもいいですね」
つりえさマリン新港店の和地店長は活きエサ銀兵を実釣テスト。ウグイに近い仲間の淡水魚なのだが、海水にも耐性があり、泳がせでもかなり長保ちする。8~13cmくらいとサイズも食べ頃なので、孫バリ無しでもOK
ヒラメは水中の動きをイメージしながら釣る
「ヒラメ釣りは、イメージしながら釣るのがとにかく楽しい。本当にそうなのかは分からないけど、イメージ通りに釣れたときの『釣ってやった感』が面白いんですよ」と針生さん。針生さんの場合、底より少し上のタナでヒラメにエサを見させて、たまに底に落として食わせるのだが、「食わせるタイミングが重要」と言う。例えば、船が少し移動してポイントに入れ直した直後。活きエサが微妙に暴れ出したときも、「ヒラメに狙われてイワシがおびえてるんじゃないか」と想像しながら、仕掛けを落とす。そのイメージ通り食ってきたときの「釣った感」がたまらないそうだ。
「今日は若干短めのハリスにしているんですが、タナぼけしないように5~10秒間隔でタナ取りをしています。またそれとは逆に、糸をサミングしながら出して仕掛けをハワせる誘いも効果的ですね。でもこれは今日みたいに釣り座が空いているときだからできる技。混んでいるときはオマツリの元なので控えた方がいいですよ」
また、針生さんは孫バリはあくまでも補助的に使うもので、エサの泳ぎを妨げないことと、仕掛けと絡んだりしないことが重要と考えている。「関東で人気の出た仕掛けにチラシ針がありますが、あれは小中型のヒラメが多い釣り場で大羽イワシしか無いときに、大きなイワシでどうやって多くのヒラメを釣ろうか?ということで考えられた仕掛けです。アタリが出る確率は確実に上がりますが、スレ掛かりも増えるのでバラシも多くなります(特に大型)。ハリが流れ出ているぶんトラブルも多くなるので使うときは配慮が必要です。満席のときなどチラシを禁止している船もあるので、使うときは確認しておきましょう」
ヒラメの食いがいいときなら、根掛かりしにくく、イワシが弱りにくいと言われる背掛けも使える。孫バリにトリプルフックを使うときにも向く
好調の鳥の海ヒラメ!盛期はこれからだ
取材を行った9月13日はヒラメの食いが非常によく、終始、ポツポツとアタリが絶えなかった。そしてラスト30分を過ぎたあたりからは活性がさらに上がり、船中一斉にヒットする場面も。終わってみれば、トップの針生さんと戸島さんが10枚ずつ、一番下の田村さんでも5枚という好釣果に恵まれた。
そんな好調も幸いし、銀兵とシンカーロボのテストも無事成功。結局、銀兵では戸島さんが全10枚中3枚、和地店長が全6枚中3枚を釣り上げた。「ミッションクリアです。これでマリンの店長として銀兵の力は見せられたかな」と和地店長。いっぽうの丹野社長は、ずっと確実に釣れるマイワシを使っていたそうで、「マリン卸部のマイワシは釣れますよ。活きイワシが必要な船宿さんは気軽にお問い合わせください」
連日、好釣果を叩き出している鳥の海沖のヒラメ船。例年、盛期は10月で、まだまだしばらくは食いのいい状態が続くはず。この日も60cm台の良型が多数揃ったが、さらなる大判サイズが出て来るのもこれからの季節。今季も期待できそうだ。
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・幹糸/8~10号 約1m(竿の長さに合わせる)
・捨て糸/4号 20cm(短)~40cm(標準)
・オモリ/シンカーロボ・フラッシュ(リバスト)40号
・枝パーツ/NTパワーヒラメスイベル 4×5(NTスイベル)
・ハリス/フロロカーボン5号 70cm+孫ハリス15cm
・親バリ、孫バリ/OHカットチヌ(オーナーばり)6号
※取材協力/つりえさ倶楽部マリンTEL:022-786-3580、
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