5月15日(火)、塩竃市のマリンゲート塩釜において「松島湾の海域環境復興を考える検討会」が開催された。
塩釜・松島地域ではすでに市民団体の「松島湾アマモ場再生会議」が設立され、震災と津波によって失われたアマモ場の再生に向け動き出している。この検討会は、東北地方整備局塩釜港湾・空港整備事務所と松島湾アマモ場再生会議の共催で、各方面の有識者と市民団体、漁業関係者らが意見を交換し、今後の環境復興に向けてアマモ再生手法や課題について話し合われた。
◆アマモ場の役割
ワカメやコンブなどの海藻に対して、海草と呼ばれるアマモ類によって構成される。主に他の海藻が生えない砂泥底に形成され、小型の甲殻類や貝類などの小さな生物が豊富。仔稚魚の成育の場にもなることから、魚の資源を維持するためにも重要とされる。また、アマモ場は海域の生態フィルターのような役目を果たし、水質を浄化することも知られている。比較的浅い海にあり、生物相も豊かなので、レクリエーションの場としても注目度が高い。
◆松島湾のアマモ場の現状
松島湾では、震災前に約1,300haあったアマモ場のほとんどが消失したが、宮戸島周辺や桂島周辺などの一部には高密度な群落が残存。一部海域では自立再生の兆候も認められている。震災前とは湾内の底質が大きく変化しており、さらなる調査は必要なものの、水質などの条件は良好と考えられ、アマモ場の再生は十分に可能とみられている。
◆アマモ場の再生に向けて
・自然の力でもアマモ場の再生産は可能だが、失われたアマモ場があまりにも大きく、回復にはかなりの時間がかかる。
・早期の再生には、底質の変化やアマモ群落の分布状況を調査した上で、人工的に効果的な再生を手助けする必要がある。
・アマモは地下茎の分枝と、種子による有性生殖の両方で繁殖するが、再生事業では、花枝から種子を採取し、育てた苗を移植する方法が最有力。
・環境復興の推進と同時に、環境モニタリングイベントやワークショップなどを開催し、市民参加型の海辺づくりを目指す。
国土交通省東北地方整備局塩釜港湾・空港整備事務所の諸星一信所長から概要の説明があり、検討会が開会した
事務局の伊藤栄明さん(宮城県釣船業協同組合理事長)は、「アマモ場の再生を通して、市民の目に見える形で復興を示していきたい。また、北浜護岸など、身近な町中に海に触れることのできる場所を作っていければ」と発言した
検討委員として、研究所・大学等から各分野の専門家が参加
地元塩釜市にある東北区水産研究所の松岡大祐主任研究員からは、松島湾のアマモ場の調査状況等についての発表があった。また、各地のアマモ場の再生を手掛けてきた海辺つくり研究会の木村尚事務局長は、市民の参加を促しながら事業を進めることの重要性を強調。「一般の方にも対象海域で小型引き網を曳いてもらうなど、楽しみながら参加してほしい。アマモ場に育つ生物を知ることで、時代とともに失われてしまった人と海の関わりを考える機会になれば」との発言で締めくくった