ロッドプランナーのひとり言[第8回]中国工場でのロッド開発
バレーヒルのロッド開発者、藤井伸二さんが月1回のペースでものつくりへのこだわりを語ります。
今年のフィッシングショーはWEB開催
先ず最初に今年のフィッシングショーに関してです。コロナ禍の中、毎年恒例の横浜および大阪のフィッシングショーが今回はWEBにて開催となりました。私は業界に入ってから25年目となりますが、もちろん初めてのことです。そのためこれまでと同様に実際に商品を手に取っていただき、直接皆様へご説明できないのが残念です。その代わりフィッシングショーの公式サイトで、事前に収録した商品説明の映像が配信されると思いますので公開されてましたら是非ご覧ください。
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前身ブランド「ミッションタックルデザイン」と中国での生産
さて今月は以前のコラムで少し触れた「ミッションタックルデザイン」について、それから中国工場へ出張した時のエピソードについてお話したいと思います。
現在はバレーヒルのロッドプランナーとして商品開発をさせていただいていますが、私が商品開発に関わった当初はバレーヒルの中で「ミッションタックルデザイン」というブランドを主宰していました。
開発コンセプトとしては「お求めやすい価格ながら、価格以上の品質と性能を具現化したシリーズ」でした。
ブランドを立ち上げた当時、すでに世界のロッド生産工場は中国が中心となっていましたが、実際は自社工場を持った大手メーカー以外は中国でのロッド開発に力を入れているところは少なく、いやストレートに表現させていただくと中国生産のノウハウを持ったメーカーは一部しか在りませんでした。
また、ブランドを立ち上げた当時は円高で1ドルが80円台という時代に加えて中国の人件費も未だ高騰しておらず、ノウハウさえ有ればリーズナブルにロッド生産することが可能だったからです。例えばガイドを「FujiチタンフレームSiC」、素材に「高弾性カーボン」を使用しても販売価格を抑えることが出来たので、性能だけでなくデザイン等に掛けるコストにも自由度がありました。
そんな時代でしたから、デザインする心得があれば必然的にブランドを立ち上げて自分が思い描く商品を作ろうと思ったわけです。ちなみに立ち上げてから3年目にはEFTTEX(ヨーロッパ釣具ショー)に出展させていただき、その時に知り合った業者と一緒にヨーロッパ市場向けに開発した「VHユーロエディション」を発売。またメーカー名は伏せますが、ヨーロッパの某メーカーのOEMもやらさせていただきました。
その後、時代の流れと共にブランドをバレーヒルと統合し現在に至るわけですが、そのミッション時代に私自身がモノ作りするあたり意識していた「ルアーロッドの本場であるアメリカへ敬意」を表現したのが、このブランド共通で見られたバット部分への「ダイヤモンドラッピング」でした。
なお予定はありませんが、仮にこの先に私自身が改めてブランドを立ち上げることになった際は、この「アイデンティティー(象徴)」は必ず違う形で復活させるつもりですので皆様お楽しみに。
最後にこれまで中国工場へ訪れた際のエピソードについて少しだけお話します。確か最初に中国へ訪問したのは2008年だったと思います。
ちなみに私は釣り業界に入る前に旅行業界にいました。そのため海外旅行自体に抵抗はありませんでしたが、実は中国だけは初めてでした。英語圏だと言葉が何となく分かるのでいいのですが、中国語は全く分からなかったので不安倍増でした(笑)
それでも不安ばかりを感じていても仕方ないので、何とか現地空港に到着して飛行機からターミナルへ入って行く途中で最初に出会った中国人が「自動小銃を持って仁王立ちした二人組の軍人さん」(笑)
後で聞いた話ですが、この時に各国から要人が来て国際的な会合が開催されていたようで、各空港で警戒態勢を取っていたためだそうです。そう言われると納得できるのですが、それを知らずに不安感満載の中で最初に会う人としてはかなり不適切に感じるのは私だけでしょうか?(笑)
というわけで、今回のお話はここまでです。
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15歳よりルアーフィッシングを始める。某ルアーメーカーを経て現在はバレーヒルにて主にロッド開発を担当。得意な釣りはバスとハードロックフィッシュで「ブラックスケール」および「サイファリストHRX」シリーズの開発担当者である。
※画像・テキスト/藤井伸二
※協力/バレーヒル