ロッドプランナーのひとり言[第6回]開発者を悩ませる〇〇
バレーヒルのロッド開発者、藤井伸二さんが月1回のペースでものつくりへのこだわりを語ります。
開発担当者が最も頭を悩ませることとは?
いきなりの質問となりますが、皆様は「商品を開発するに辺り、担当者はどういった点に一番苦労すると思われますか?」
例えば釣具の場合、開発内容はロッド、リール、ルアー、用品、アパレルなどで分かれますが、どの開発においても恐らく各メーカーの開発担当者が大なり小なり苦労している点だと思います。もう少し答えは書かないで引っぱりますね(笑)
ちなみに私が主に関わるロッド開発の場合。企画立案、ロッドデザイン作成、アクション決定、フィールドテストなど色々あります。確かに企画立案はセンスが問われるものの、トレンドを意識すれば大きく外すことはないはずです。
また、ロッドデザイン作成は独創性を追求しないで無難に纏めることを意識すれば、そこまで難しくないです。アクション決定やフィールドテストは関わっているテスターにお願いすれば、最終的に答えは見つかります。では一体何が難しいのか?
答えは「商品名」いわゆる「ネーミング」です。これを聞いて「自分はそんなことない」という方もいると思います。
そんな方はそういうセンスに恵まれている方なので、この後のコラムは読まなくて大丈夫です(笑)
冗談はさておき、このネーミング。もちろん開発している商品に違いがあっても、開発者にそれぞれコンセプトや思い入れがあるはずなので普通は難しくないのでは?といった意見もあると思います。
確かにその通りで、すぐに思い浮かんだ「商品名」が何の問題もなく決定となり採用される場合もあります。また同じ釣具でもルアーとエサ釣りでは競合しているメーカー数に違いがあるため全てを同じようには括れませんが、それでも実際はちょっとした、いや場合によっては大きな壁となり得る問題があります。それは「商標」という問題・・・・・。
皆様も釣具に限らず、買い物をされる際に「商品名」に釣られて何かを買った経験があると思います。例えば、こんなケースがありませんか?本来は違う名前の商品なのに、その商品の中で一番売れている「商品名」でその商品自体を覚えてしまっているケース。
それぐらい「商品名」というのは形に見えない大切な要素で、商品の魅力にも成り得る可能性を秘めています。そのため言い換えれば、各メーカーとも大切な財産と言えますので、当然ながら良い商品名が出来上がると各専門分野もしくは企業によっては幅広い分野で「商標登録」することで名前を守っています。
そして開発者がネーミングするにあたって、これがどのように影響するかと言いますと・・
「すでに良い商品名は各メーカーより商標登録されているため、思いついた商品名のほとんどが使えない」
という事態となったりします。特に皆様に伝えやすい英語でのネーミングとなると非常に難しい場合が多いですし、比較的登録されていない別言語を代わりに考えても、今度は皆様に伝わりにくいため採用しにくい部分が出てきます。
ただ、そういう中でも開発者として「商品名」を決めないといけません。そこで考えるのが主に英単語を組み合わせた「造語」になるわけです。英単語ズバリは難しくても、造語となると可能性がかなり広がるからです。
もちろん造語なので海外の方が見ても分からないだけでなく、かなり強引な部分もあります。ただし実際に商品として発売されて、皆様から商品をご好評いただくと意外と馴染んでくるものです(笑)
というわけで最後となりましたが、この造語で作られた弊社の一部ロッドについて名前の由来をご紹介して今月のコラムを終わりたいと思います。
英単語を組み合わせたネーミング例
Blackscale Distance Edition[ブラックスケール ディスタンスエディション]
バレーヒル(ValleyHill) ブラックスケールXP BKHC-74XHX 40540
CYPHLIST-HRX PRO SPEC [サイファリストHRX プロスペック]
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15歳よりルアーフィッシングを始める。某ルアーメーカーを経て現在はバレーヒルにて主にロッド開発を担当。得意な釣りはバスとハードロックフィッシュで「ブラックスケール」および「サイファリストHRX」シリーズの開発担当者である。
※画像・テキスト/藤井伸二
※協力/バレーヒル