[連載]常笑upcoming fishing!☆第12回 ザ・春カレイ[船カレイの基本を解説]
連載:針生秀一さん 第12回 ザ・春カレイ
※この記事は2014年3月にプレミアムメルマガで配信したものです。
宮城では春告魚メバルと並ぶ人気の春マコガレイ
いよいよ春ガレイのシーズン到来で、特に狙いたいのはマコガレイですね。春告魚といえばメバルですが、宮城でいう春のアオメ、つまりマコガレイが釣れてくると東北の釣りにも春の知らせです。最近はアオメと呼ぶ釣り人も少なくなってきたというか、あまり通じなくなってきました。アオメと呼ぶようになったのには諸説あるようですが、ブルーグリーンに輝く眼からアオメというのが通説ですね。
かつて雑誌で見たのが、煮付けにして食ったらアッ、ウメーでアオメだという記述。まぁ冗談でしょうが、それで私が中学生のころ、七ヶ浜の花渕浜堤防でマコガレイを釣ったときに隣のおじさんから「そいづはアオメだべ、煮で食ったらぅんめ~どぉ」と言われたことを思い出しましたよ。当時はマコガレイをマガレイと呼ぶ人が多かった。それをアオメといったのは初めて聞いた呼び名でした。なんかベテランらしくてカッコイイと思って、それからマコはアオメと、得意になって呼んでいたのです。
今でも吉田・花渕浜堤防は春のカレイの好ポイント。特に漁港先端の灯台の外側はポールポジションです。敷石の切れ目を狙い、ちょい投げでマコガレイが釣れます。手のひらサイズと侮るなかれ、ドカンと40cm級もきます。イシガレイの良型にハダガレイ(ホシガレイ)の実績もあります。彼岸すぎあたりからはアイナメ交じりで楽しい釣りができます。手軽な堤防釣りも良いものです。
さて、船での春マコ攻略ですが、低水温、低活性でアタリも小さく、誘いが警戒されるようなときもあって、カレイ釣りで最も難しい条件が揃うわけですが、ドカンと大釣りも出るのが春マコ。かつて情報が少ない中でも、田代島の仁斗田港前、出島の筏まわりに袖袋沖、鮫ノ浦湾口寄磯から山王島前、志津川湾沖の定置など、春先の大釣り実績ポイントが知られていました。「鮫ノ浦の4月バカ」なんていわれたエイプリルフールの大釣りが話題になって、船の予約が取れなくなったということも。現在でも、このあたりの情報が出てくることは少ないですが、ゆえに穴場なのでしょう。予測をつけて「釣り河北」の情報をチェックしておき、先駆けて竿を出してみましょう。
マコガレイは「釣り河北」にも魚種別攻略法で記されています。そこで春マコと限定して、これを頭に入れておいて、気づいたらやってみれば、もう一枚多く釣れるかもしれないという要点を記してみます。
春先は水深のあるポイントを釣る事も多く、水圧もあって操作性、感度が鈍ります。それで柔らかい泥場となれば難易度はマックス。こんなポイントでは、底に仕掛けを置くようにして聞き上げ主体で釣るという組み立ても良いですが、これを誘いで食わせられるようになれば一枚の満足感が上がって、さらに良い釣果が望めます。
春先の深場ではピンポイントを釣るカカリ釣りに較べて、広い範囲を探る流し釣りが有利なことが多い。こんな流し釣りでは、誘いで注目させて寄せるというよりも、そこで巡り合ったカレイに食わせるというイメージの組み立てが肝心です。
釣りの手順としては、まず着底したら大きくシャクリ上げて仕掛けを示し、そこからゆっくり落とし込み、コヅキから止めというのが基本のパターン。注意することは、オモリを刺して抜くようなコヅキをしないこと。泥をなでるような感じのコヅキがマッチしますが、深場でこんなコズキは至難のワザですね。
そこでゆっくり引きずるように上下してから、仕掛けの長さ分くらいをイメージして底を切り、底際で仕掛けを揺らして止めて落とし込み、オモリを立て寝かせるくらいのコヅキから止めてカウントダウン。そこからスーっとシャクリ上げという誘いパターンを組み入れてみるのです。止めのタイミングと誘いの幅をいろいろ試してみましょう。意外に効くのが2本バリの仕掛けです。これは中バリがない分、仕掛けの動きがよいというのがメリットです。
シャクリ上げはアタリを確認する聞きも兼ねます。重みを感じたら(これがいわゆるモタレですね)そのまま止めずに掛けにいくことを薦めます。カレイは捕食すると前進してくるので、この仕掛けの弛みでアタリは伝わりにくく、消えたように感じるのでしょう。
これで止めて待ってみて、明確なアタリを感じたところでアワセに入ると外すことが多い。これはカレイがエサを飲み込んでいたのを、違和感で吐き出した反応にアワセを入れたということが想定されます。つまりカレイの口からエサを引きずり出してしまったわけです。これが上級者の人からよく言われるように「アワセが早かったのではなく遅い」ということですね。志津川「三浦屋」さんにカレイ釣りに行って、釣り後のお茶で談笑をした人なら、明船長から聞いたことがあるでしょう。
コヅキを止めるというのはカレイに食いつくタイミングを与えるということ。活性がよければ動くエサに飛びつくように食ってきますが、低活性時は止まったときに捕食してくることが多い。カワハギ釣りでの、タタキで注目させて弛ませで食いつかせるという釣り方の底バージョンのようなものです。食い込みも浅く、違和感を与えれば吐き出しも早い。テンションを消して深い食い込みを待つというのもアリですが、これで見逃して外すよりもアワせにいったほうがよい結果に繋がります。
食わせの誘いとは、小さい幅で細かくというのを基本にして、スピード、リズムを変えてコヅきます。これは自分の使う仕掛けによって違ってきます。大きく誘い上げて落とし込むというのも、反射食いを狙う食わせの誘いです。コヅキを入れていて微妙な違和感にアワせきれず掛けられなかった。これは近くに魚が居ると思われますね。こんなときは特に、ゆっくり上げてフワッと落とし込むのが有効です。カレイだって、飲み込めずに逃げられたエサが、また目の前に落ちてきたのですから反射的に深く食い込んできます。上げていく仕掛けを追うように食い上がってくるのはナメタかアナゴですね。
エサはハリに縫い刺すようにコンパクトに付けます。ボリュームを損なわず、ダンゴ状にしてタラシは短めに、これで十分です。先バリは少し多めにしても良いでしょう。このエサ付けでアタリ即アワセが決まります。
アオイソメのほかに、出島・女川あたりでは定番のエラコ、泳ぎで誘うアオコガネ、アオイソメと合わせてアピール効果が望めるイワイソメなど、いろいろ試してみるのも面白いですね。大きめ長めのエサは先バリに刺すのが良いです。先バリを柔軟なナイロンハリスにして、柔らかいアクションを狙うという密かな裏ワザを繰り出すのも作戦のひとつです。これで隣に差をつけられるかも?春のカレイ釣りを楽しみに行きましょう!
※取材テキスト・写真提供/針生秀一