別名ボッケ、スゴエモン、サッタロウ、‥初冬に防波堤で獲れてお鍋がおいしいケムシカジカって?
「ぼっけ」、「すごえもん」、「おこぜ」、「さったろう」これすべてケムシカジカの地方名。この魚、一体どんな凄いモノを持っているのか?
ケムシカジカというのは東北各地の沿岸から深場に生息するカジカ類の仲間で、普段はロックフィッシュ船やアイナメ・カレイ船、根周りのジギングや深場のタラ釣りなど、浅場から深場まで広い範囲の船釣りで釣れてくることの多い魚。
ケムシカジカを岸から狙いやすくなるのが初冬の季節。アイナメやベッコウゾイなどと同じように、浅場の藻場、根周りに接岸して産卵するのだ。この季節になると沿岸の漁で網に入ることが多くなり、古くからボッケが沢山獲れた宮城県七ヶ浜町では毎年「ボッケ祭り」なる行事も行われている。
ボッケはブヨブヨとした皮下のゼラチン質が絶妙で、鍋物が最高に美味。特に味噌との相性がよく、味噌仕立ての鍋にすると良い。皮は小さい鱗が付いて食べにくいので、皮を剥いでから調理するのがおすすめ。肝など内蔵も捨てずに食べてみよう。お刺身やから揚げなどもおいしく頂ける。
岸から釣れるようになるのは、仙台、石巻周辺では11月過ぎ頃から。この季節になると岸壁のヘチにケムシカジカが張り付いている姿がしばしばみられるようになる。釣り人はヘチ際を見ながら歩いて、サイトフィッシングでケムシカジカを探す。
「スポーニングに入ったボッケは産卵が終わるまでほとんどエサを口にしないようで、エサやルアーで誘っても食ってきません。なので、柄の長いタモですくうか、落としギャフなどで引っ掛ける人が多いですね。今シーズンは去年、一昨年より数が多くないようですが、一人5匹、6匹と獲っている人もいます」とは、七ヶ浜在住の小野浩さん。
「ボッケは垂直のストラクチャーが好きなようで、岸壁のキワに着いて、際の海藻やイガイのある層に産卵します。ボッケが産卵すると、アイナメが寄ってきてボッケの卵を食べている光景もよくみられますよ」。ケムシカジカの産卵期がちょうどアイナメのスポーニングの時季と重なっていて、この季節のアイナメは他の競争相手の卵を食う習性があるためボッケの卵も食べられてしまうようだ。
宮城県だと仙台・七ヶ浜周辺、石巻周辺の漁港、港湾で実績がある。潮通しの良い防波堤が有望。最近は防波堤は釣りが禁止されている所が多くなったが、投げ釣り、ルアーで釣行した際は壁際も忘れずにチェックしてみると良いだろう。
[2023年11月追記]この記事は2015年の取材時の情報をそのまま掲載しています。近年の高水温化などの影響により、ボッケの産卵シーズンが遅れたり、岸壁付近に接岸してこないケースが増えてきています。
また、釣り禁止になる漁港も増えてきています。漁業権の対象となっている貝類やタコ類を採捕すると密漁になりますので、漁業関係の方に誤解されるような行動は避け、ルール、マナーを守って行動するようにしましょう。
※取材協力/小野浩(仙台新港ルアーde坊主代表)