釣行記

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伝統漁具マスナタのヒラメ釣りとは?

坂下利助 2021年1月7日 更新

青森・階上沖で人気のマスナタのヒラメ釣り。伝統漁具のマスナタを使い、冷凍イワシやタコベイトを活きエサのように泳がせる。特殊な釣りだけに、道具もテクニックもマニアック。だからこそ、いったんハマると抜け出せない面白さがある。

「マスナタ」別名「三角バケ」は伝統漁具

マスナタ(三角バケ)はシャクると横に泳ぐので、横の動きに反応しやすいヒラメに効果的。激しくシャクるのが大変なイメージだが、比較的スローな誘い方法もあり、階上周辺地域では幅広い層の釣り人に受け入れられている

マスナタは頭の断面が三角形をした細長い物体で、三角バケなどと呼ばれることもある。タテにシャクると横に泳ぐ特性を持ち、この特性を利用して、サクラマスやヒラメなどのフィッシュイーターを釣るために使われてきた。このマスナタ、もともとは北海道や下北地方で広まった漁師道具の一種。階上に本格的に導入されたのは十数年前で、その後、階上にマッチした形で独自に進化・発展をとげてきたそうだ。

階上のマスナタは20年ほど前に使われていたものからは若干軽量化されている。北海道で使われていた元祖マスナタは500~600g以上あったのだが、それを激しくシャクり続けるとなると、かなりの体力と技術が必要だった。階上でも最初は同じような釣り方をしていたのだが、あまりのハードさに落伍者が続出。このままではマズいということで、さかした釣具店では400g前後のマスナタを特注。かなり高めだったバケの値段を3000円前後に抑え、普通の胴突きタックルでも楽しめるように道具立てや釣法を確立。階上のマスナタ釣りとして定着させた経緯がある。

ロッドは全長2m前後の7:3調子。オモリ負荷100号前後の胴突き竿などが使いやすい。シーマイティシリーズ(シマノ)やホカゲFD、シーパワーV(DAIWA)などがオススメ。リールはPE5~6号を100~200mほど巻ける中型両軸。ハイパワーで軽量な、最新の小型電動リールも◎
 
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仕掛けや釣り方は体力やスタイルに合わせる

さかした釣具店で取り扱っているマスナタの一部。フジワラの規格品と三木製作所の特注品とがあり、いずれも穴空け加工、バランス調整済み。重さは400g前後がスタンダード
上)タコベイトやティンセルにフックをセット。フックはフカセ16~18号(ステキ針)、トレブル120 #6(がまかつ)、パワフルスペアフックL(シャウト!)など。下左)上バリ用:タコベイトと段差バリを組み合わせた場合。下右)冷凍エサ用のタコキャップ。8~10号のフロロカーボンハリスと、ふかせ16~18号、チヌブラック8~9号、トレブルフック5~6号を使用

階上沖のマスナタ釣りには、タコベイトやティンセルといった擬似餌の2段仕掛けで狙う場合と、冷凍イワシをエサに1段仕掛けで狙う場合の、2パターンがある。前者はかなり激しくシャクって誘う必要がある、体力勝負の釣り。一方、後者は冷凍エサを泳がせれば十分食ってくるので、釣り人の負担はぐっと軽くなる。

タコベイト2段仕掛けは、マスナタの上に胴突き式に枝バリを出し、バケ尻のハリと合わせて2段にした仕掛け。食いのいときであれば、ダブルを狙えるぶん数を伸ばせるが、大きなネックは、シャクリが大変なこと。400gのマスナタ仕掛けをシャクり続ける必要があるので、体力に自信のある人、ゲーム感覚でガンガン楽しみたい人に人気がある。

一方、冷凍イワシやイカナゴ等をエサに1段仕掛けで狙う場合、鬼のようなシャクリは不要。定期的に大きく竿をあおって、冷凍エサがいかにも活きているかのように泳がせればOKだ。シャクリ回数にすれば、2段バリの約3分の1。こちらは体力にあまり自信が無くても十分に楽しめる。

さかした釣具店オリジナルの2段仕掛け。上から…リーダー(胴突き1本仕掛けの幹糸):ナイロン18号2~3m、上バリ:タコベイト(グリーン系とピンク系が当たりカラー)、マスナタ400g(三木製作所特注品)、下バリ:バケ尻用タコキャップ、エサ:冷凍イワシ、塩イワシ、オオナゴ(イカナゴ)等を使用

ヒラメが小魚を食っているうちはチャンスあり

10月2日に常連さんが釣った75cmの良型。ヒラメのサイズは35~50cmをアベレージに、60、70オーバーの良型もたまに混じる

マスナタ釣りのタナは、底から1~3mくらい。ヒラメは5mくらいまではエサを追うので、底スレスレを狙う必要はない。階上は根掛かりポイントも多いので、根がきついようなら3mほど底を切るようにする。

マスナタ釣りのシャクリ技術は若干の慣れが必要。シャクリが適正でないとマスナタの泳ぎが乱れて、道糸(と幹糸)にハリが絡んでしまう。また、横方向へ泳ぐマスナタが左右を往復するよう操作しないと、横へ横へと進み続けて、オマツリが多発する。隣と適度な間隔を保ち、トラブルを極力減らすように努力しよう。基本をマスターしたら、誘いのテクニックを駆使してヒラメに食わせる。釣り方ひとつで釣果に差がつくので、そこがまた面白いんだとか。

今シーズンの階上ヒラメは、水温が高めだった関係か、1人2~10枚程度と、例年よりは順調に推移している。それでも好調な日には1人20枚釣れたこともあり、ポテンシャルは健在。今後の釣れ具合はベイト次第だが、もうしばらくは好シーズンが続きそうだ。先日、約2か月遅れでカタクチイワシの巻き網漁が始まるなど、エサのイワシもシーズンが遅れている。坂下さんの予想では、おそらく年内一杯は楽しめるのではないか、とのこと。

階上沖には天然、人工の根が連なり、60cm台のヒラメのほか、ソイやアイナメ、イシナギなども狙える。水温の高いうちは、イナダ、ワラサやサバなどの青物も期待大
左)マスナタ仕掛けにヒラメがダブルヒットすることも。右)階上町はアイナメ(地方名:アブラメ)が多く、階上町の町魚にも指定されている。アイナメはこれから冬場にかけてが本格シーズン
さかした釣具店・第三浩丸ではチューンナップ済のマスナタ仕掛けをバリエーション豊かに用意。セットもあるので、初心者は全てお任せする方が確実(出船時間より30分ほど早めに行けばOK)。遠方で使用したい方には、通販でも対応可能だ

取材・解説/坂下利助
取材協力/さかした釣具店・第三浩丸(TEL:0178-89-2252)

PROFILE:坂下利助

青森県階上町のさかした釣具店店主であり、第三浩丸の船長。船長として海に出ながら、釣法、仕掛けを研究しているので、当地の釣りのことは熟知している。坂下さんのオリジナル商品の詳細はHP

 

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