知っておきたい!釣りに役立つ目の話[第2回]遠近両用レンズの話
岩手県花巻市のメガネのおくやま・奥山剛さんが釣りと偏光サングラスの関係や目についてのイロイロを語ります。第1回の老眼の話に続き、「遠近両用レンズ」について解説していただきました。
「累進多焦点レンズ」と「二重焦点レンズ」とは?
『老眼』と同じで、『遠近両用レンズ』についても誤解されている方が多いので、まずは遠近両用レンズのメリット、種類、構造から説明致します。遠近両用レンズのメリットは「メガネの掛け外しの煩わしさを解消できること」になります。「遠くも近くも見えること」ではありません。
遠近両用レンズの種類は、境目の無い『累進多焦点レンズ』と境目の有る『二重焦点レンズ』があります。どちらも遠近両用レンズと言いますが、全く別物と思って頂いたほうがいいと思います。
現在では、日常使いや初めて遠近両用を使うといった場合、ほとんどが境目の無い累進多焦点レンズが使われています。理由としては、やはり境目が無いほうが見た目にいいからという点になります。そのため、各メガネレンズメーカーの遠近両用レンズの主力ラインナップも累進多焦点レンズとなっています。境目が無ければ、見た目だけでは遠近両用かどうかは相手に気付かれませんし、むしろメガネの掛け外しの仕草が減りますので印象が若々しくなります。
次に構造ですが、累進多焦点レンズは遠くをみる部分を基準にしてレンズの下に向かうほど近くが見やすくなるようになだらかに度数が変化しているという構造になります(図を参照)
この度数の変化量を加入度数と言いますが、変化量が多い(加入度数が強い)ほど近くの細かいものが見やすくなりますが、慣れにくい、歩きにくいという負の部分も発生してしまいます。そして、点線の部分、鼻側と耳側の部分はボヤけて物体が見づらい範囲となります。この構造のせいで、「遠近両用は使いづらい」、「遠近両用は歩きにくい」という話になるのです。これは度数をなだらかに変化させている以上、どの累進多焦点レンズでもこのような見づらい範囲が発生してしまいますが、レンズの設計におけるグレードを変えることで見づらい部分を減らすことができます。各レンズメーカーはこの『見づらい範囲をどれだけ減らせるか』という目標のもと新しい商品の開発をしていることになります。つまりは、この部分がレンズの価格の違いとなります。
二重焦点レンズの構造はとてもシンプルで、遠くを見る部分、近くを見る部分と境目が有ることで明確になっています。そのため慣れやすい、視野が広い、景色がゆれる感じが無い、といったように見た目を気にしなければ使いやすさではこちらに分が有るかと思います。そのため、釣りやゴルフ用などに二重焦点レンズをおすすめしているメーカーもあります。偏光レンズメーカーのTALEX社も二重焦点レンズがラインナップにあります。
釣りと遠近両用レンズ
それでは、「釣りのシーンにおいて境目の無い遠近両用レンズは使えるのか?」という点ですが、10人中7〜8人は使えると思います。
実際既に遠近両用に慣れている方はそのメガネで釣りをしている方もいらっしゃるでしょう。普段、遠近両用メガネではない方でも使いこなせることはできると思いますが、そのためには「普段使っているメガネと度数を変えたメガネを使う」ようにすれば使いこなせるはずです。
どういうことかというと、普段使うメガネは細かい字が書かれている資料や、新聞の文字が見える必要がありますが、釣りのシーンではそこまで細かいものが見えなくても良いはずです。そのため、『細かいものを見る』ためのメガネではなく、『歩きやすさ』を優先させたメガネのほうが快適に使えるかもしれません。メガネ一本で仕事も趣味もするというのは釣りで例えるなら、釣り竿一本で鮎も渓流もオフショアの釣りもするようなものです。実際にゴルフ、登山、卓球などの趣味に使いたいという人で普段のメガネとは違う遠近両用の合わせ方で快適に使用されている人は多くいます。
ネットでは、釣りのシーンで遠近両用レンズは使いにくいという否定的な意見もありますが、そもそも釣りといってもそれぞれのスタイルが違うはずです。狙う魚、場所、時間帯、移動することが多いか少ないか、生き餌なのか疑似餌なのか、タックルの仕様など。
メガネの度数を合わせることは、それぞれの生活スタイル、仕事、趣味などに応じてどのような度数に設定するかというのを使用者と相談しながら決定していくものですが、そこにご自身の釣りのシーンでの要望を組み込むことでより使用者の使いやすいメガネとなると思います。メガネを作る際は、ご自身の『見たい物、見たい距離』をメガネ店に伝えるようにすることをおすすめします。
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岩手県花巻市出身1982年生まれ
日本眼鏡技術者協会SS級認定眼鏡士
釣りやアウトドアシーンでのオーダーメイド偏光サングラスの相談も多く対応している。自身で組み立てする偏光サングラスの製作本数は年間300本以上
メガネハウスおくやまのFacebookにて『メガネ選びの参考に』というタイトルで目とメガネに関する情報も投稿していますので、そちらも参考にしてみてはいかがでしょうか。
※写真・テキスト/奥山剛
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