タチウオ
タチウオ釣りはもともと関西エリアで特に人気のあったターゲットで、釣りの楽しさと食味の良さから東京湾など関東でも定番の釣り物になった。暖流系の海流の変化、海水温の上昇により東北沿岸にタチウオが本格的に回遊するようになると、宮城でもあっという間に人気上昇。宮城沿岸で主流の釣り方は日中のジギングと太刀魚テンヤの2つの釣法で、両者が同船して狙うことも多い。
タチウオの形態と生態
太刀魚の名の通り、銀色の刀剣のような魚体と鋭い歯を持つ魚。南方では最大で2m以上にまで成長。尾が細長く全長を計測しにくいこともあり、体側の幅広い部分に指を当てて「指〇本(F〇)」など指の本数に合わせてサイズを表現することも多い。
大きな口と鋭い歯を持つ魚食性の強い魚で、立ち泳ぎをしてエサを待ち構える習性が知られている。遊泳力はあまり強くないものの、潮流や餌のベイトの群れを追って広範囲を回遊している。
2023年までの宮城沿岸での主な釣期は7~11月頃まで。夏場は卵、白子の発達した個体が多く、長い期間に複数回の産卵をしていると考えられる。
太刀魚ジギングのタックル、道具立て
[ロッド]
宮城で釣れ始めた頃は標準負荷100g程度のスロージギングロッドなどで狙う人が多かったが、現在は専用ロッドを使う人が増えてきた。エリアの水深や釣り方などに会ったものをチョイスする。
ラインはPE1号、リーダー50Lb程度以上。歯が鋭くリーダーカットの危険のあるタチウオには、専用の太刀魚リーダーなどを使用すると良い。
[メタルジグ]
メタルジグはポイントの水深にもよるが、追波湾の場合は状況に合わせ100~150gくらいを使用。タチウオにはパープル、グローなどが定番カラーとされているが、これは夜釣りで狙うことの多い関西の傾向もあり、時間帯や照度などによっても当たりカラーは異なる。過去取材では派手なピンクやオレンジなどが釣れていたほか、ゼブラカラーもよく使われる。
[フック]
フックはタチウオ専用のものを使用。タチウオ用は刺さりの良いバーブレスフックで、タチウオが暴れてジグが飛んだ場合に万一のけがを防ぐ意味も持っている。
太刀魚用フックはツインアシストタイプと3本、4本フックタイプが存在する。アシストタイプとイカリ型の組み合わせは好みにより様々なのだが、これから始める人はフロントにツインアシスト、リアに4本フックがバランス的に釣りやすくおすすめ。
太刀魚ジギングの釣り方
魚探をみている船長の指示に従いレンジを合わせることが第一だが、思わぬ上層まで浮いていた個体が突然喰ってくるケースもあるので回収中も油断は禁物。
釣り方はフォールからタダ巻きだけでも釣れるが、反応に合わせて小刻みなピッチやヒラヒラとしたフォールなどを使い分けられると釣果がアップする。その時々の喰い方によってフォールに入った瞬間や、フォール中のラインに出る変化にアワせる必要も。
やり取りはラインが弛まないように一定のスピードを保ちつつ、速めに巻き取る。タチウオは巻き上げ途中に上に泳いでフッと軽くなるケースがある。バーブレスフックを使用しているためここで糸を緩めてしまうとバラシの原因になるので、テンションを抜かないよう、巻きが軽くなっても素早くラインスラックを取りながら取り込みまで油断しないようにしよう。
太刀魚テンヤのタックルと道具立て
追波湾の場合はジギングと同船して狙うこともあり、ジギングと同様のタックルで釣ることも出来る。近年は東京湾などで盛んな太刀魚テンヤ向けに専用ロッドも多数発売中。太刀魚テンヤ竿は操作性と喰い込み性、バラしにくさに優れ、より釣りやすいはずだ。宮城だと40号か50号のテンヤに合わせたオモリ負荷のタックルを使用する。
[太刀魚テンヤの仕掛け]
太刀魚用テンヤはヘッド部のオモリと下向きのメインフックがセットになったもの。フック上部には冷凍イワシなど餌をワイヤーで巻き付けて使用する。テンヤの号数は宮城沿岸では40号がメイン、潮流の速い状況や深場で50号も使うことがある。テンヤのカラーは夜光、パープル、ピンク、シルバーなどジグと同様に使い分け。メインフックの他にクワトロフックなどアシストを装着するのもバラシを防止するのに効果的。太刀魚の歯に切られないように専用リーダーを装着するのもお忘れなく!
[太刀魚テンヤのエサ]
餌は冷凍イワシをテンヤの上部に合わせ、ワイヤーで巻いて固定する。タチウオに喰われるとガジガジ噛まれて崩れるので、面倒でもエサ交換はしっかりしておくこと。喰いが良くエサ交換が頻繁なときは、イワシのかわりにワームを使うワームテンヤもあり(船宿により禁止するところもあるので事前に確認を)。冷凍イワシが無くなった場合の予備用としてワームを備えておくのも一手。
太刀魚テンヤの釣り方
この釣りではタチウオの釣れている(ベイトのいる)レンジに合わせるのが基本。レンジからズレてしまうと釣果が激減する。ラインカラーで当たっている水深を把握するのでも良いのだが、上で紹介したようなカウンター付きリールがあるとタナ合わせが楽。
タチウオの捕食は下から勢いよく食い上げてフッと軽くなったり、ガジガジとかじるようなアタリが穂先に出ることもある。感度の良いタックルだと周りにタチウオがいる違和感を感じ取れることもあり、上級者が専用タックルを好むのはこのあたりの違いが大きい。
タチウオは捕食が上手な魚ではないため、メインフックがしっかり口の中に掛かれば良いのだが、フッキングが甘いとバラシにつながることも。アシストフックを付けておくと補助にはなるが、ジギングの場合と同様に食い上げなどに気を付けながら糸を弛ませないやり取りを心がけることが大切になる。
太刀魚の食べ方、捌き方
タチウオのギラギラの魚体はグアニンという物質によるもので、体表にウロコが無く、比較的に捌きやすい。内臓を取って切り身にしたものを塩焼きやから揚げ、3枚におろして刺身、炙りも美味。
長い魚なので、中形以上は適当な大きさにブツ切りにしてから3枚におろすとやりやすい。指3本くらいの小型の魚は大名おろしのように細長い半身にして、梅シソ巻き揚げにするのが定番。適度に脂の乗った白身は何にしてもおいしいので、いろいろ試してみていただきたい。